多収で耐倒伏性に優れる北海道向けサイレージ用トウモロコシ新品種「北交88号」
要約
「北交88号」は、早晩性が"中生の中"に属し、収量性は同熟期の「おおぞら」より多収であり、耐倒伏性に優れる。すす紋病抵抗性にも優れ、北海道の道央中部、道央南部、および道南に適する。
- キーワード:トウモロコシ、サイレージ、品種、倒伏、すす紋病
- 担当:自給飼料生産・利用・飼料作物品種開発
- 代表連絡先:電話011-857-9260
- 研究所名:北海道農業研究センター・酪農研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
近年の濃厚飼料価格の高騰もあり、高栄養で多収な自給粗飼料であるサイレージ用トウモロコシの重要性はますます高まっている。トウモロコシ品種には多収性が望まれているが、多収化により植物体が重くなると収穫ロスや収穫作業効率低下の原因となる倒伏のリスクが高くなる。近年のトウモロコシ品種は収量性が向上したものが多いが、耐倒伏性レベルが不明瞭なものや不十分なものが多い。また、多発傾向にあるすす紋病抵抗性の強い品種も求められている。そのため多収性、耐倒伏性、およびすす紋病抵抗性を持つ品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「北交88号」は、Ho123×Ho124の単交雑一代雑種である。
- 絹糸抽出期は「おおぞら」に比べて2日早く、「36B08」より3日早い。収穫時の雌穂の熟度は「おおぞら」並で「36B08」より進んでいる。総体乾物率は「おおぞら」よりやや低く、「36B08」よりやや高い。以上のことから早晩性は"中生の中"に属する(表1)。
- 発芽期は「おおぞら」「36B08」並で、初期生育は「おおぞら」「36B08」より優れる(表1)。
- 稈長は「おおぞら」より低く、「36B08」より高い。着雌穂高は「おおぞら」「36B08」より低い(表1)。
- 乾物収量は「おおぞら」「36B08」より多い。乾雌穂重割合は「おおぞら」より低く、「36B08」並である。総体の推定TDN(可消化養分総量)含量は「おおぞら」並で「36B08」より高い(表1)。
- 耐倒伏性は「おおぞら」より強く、「36B08」並である(表2)。
- すす紋病抵抗性は"強"で「おおぞら」より強く、「36B08」よりやや弱い。ごま葉枯病抵抗性は「おおぞら」より強く、「36B08」よりやや強い(表3)。根腐病の発病は少ない(表1)。
成果の活用面・留意点
- 適地は北海道の道央中部、道央南部および道南である。
- 種子の市販開始は2018年以降を予定。
具体的データ
その他
- 中課題名:水田・飼料畑・草地の高度利用を促進する飼料作物品種の育成
- 中課題整理番号:120b0
- 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
- 研究期間:2010~2015年度
- 研究担当者:佐藤尚、黄川田智洋、濃沼圭一、伊東栄作
- 発表論文等:
佐藤ら「だいち」品種登録出願2016年4月8日(第31027号)