TMRセンターにおける飼料原料としてのイアコーンサイレージの経済性

要約

TMRセンターがイアコーンサイレージ(ECS)を60ha生産する場合、生産費は約51円/TDN1kgとなる。飼料原料として利用すると飼料費は搾乳牛1頭当たり年間3千円~1.3万円程度低減する。原物収量が概ね1,200kg/10a以上であれば経済的有利性が生じる。

  • キーワード:イアコーンサイレージ、TMRセンター、生産費、収量、経済性
  • 担当:自給飼料生産・利用・自給濃厚飼料生産
  • 代表連絡先:電話011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

我が国では乳牛向けに年間300万トンを超える配合飼料が生産されているが、配合飼料原料の90%は輸入に依存しており、また、配合飼料原料の約半分はとうもろこしである。輸入飼料依存による国内畜産業の経済リスクを下げるため、国内産の飼料として、粗飼料としてのとうもろこしサイレージに比べ穀実部分の利用を重視する濃厚飼料としてのイアコーンサイレージの生産利用技術の開発が進められている。そこで、イアコーンサイレージに関して生産から利用に至る現地実証試験が行われている北海道上川地域美瑛町のTMRセンターを対象に、試験結果、聞き取り調査、および線型計画法を用いた慣行のTMR(混合飼料)とイアコーンを含むTMRとの選択シミュレーション分析から普及定着のための経済的条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 550haの自給飼料を自ら生産するTMRセンターにおいてイアコーンを導入する場合の生産費は、作付面積60ha(実証試験規模)、現物収量1,446kg/10a、乾物収量925kg/10aのとき、スナッパヘッドのみを新規導入する場合ではTDN(可消化養分総量)1kg当たり51.1円、細断型ロールベーラをあわせて新規導入する場合には51.6円と試算される(表1)。
  • 現地実証対象のTMRセンターで製造する主要製品の一つである1日当たり乳量38kg設定のTMRで比較した場合、イアコーンを含むTMRの方が経済的に有利で、飼料費の低減効果は配合飼料や原料として用いられるその他の購入飼料の価格水準に応じて搾乳牛年間1頭当たり6,500円~13,000円程度と試算される。また、イアコーンを含むTMRが慣行TMRに比較して有利性を持つために必要となる最低目標収量(原物)は、最も少ない場合で815kg/10a、最も多い場合で954kg/10aである(表2)。
  • もう一つの主要製品である1日当たり乳量40kg設定のTMRで比較した場合でも、イアコーンを含むTMRの方が経済的に有利で、配合飼料等の価格水準に応じて搾乳牛年間1頭当たり3,000円~8,400円程度の有利性を持つ。また、イアコーンを含むTMRが慣行TMRに比較して有利性を持つために必要となる最低目標収量(原物)は条件により1,025kg/10aから1,194kg/10aである(表2)。

成果の活用面・留意点

  • イアコーンサイレージの導入を検討しているTMRセンター等において活用できる。
  • 自走式ハーベスタ等飼料用作業機を所有するTMR供給頭数約1,200頭のTMRセンターを前提とした試算結果である。
  • TMRセンターの飼料設計が変化すれば、イアコーンサイレージを含むTMRの経済的有利性も変化するが、イアコーンサイレージの給与量が多い方が経済的有利性も大きい傾向がみられる(表2)。

具体的データ

その他

  • 中課題名:大規模畑作地域における自給濃厚飼料生産利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c5
  • 予算区分:交付金、その他外部資金(補正緊急展開)
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:久保田哲史、藤田直聡、大下友子、青木康浩、根本英子
  • 発表論文等:久保田、藤田(2014)飼料自給率向上を目指した国産濃厚飼料生産利用の成立条件 「地域資源活用による農村振興 条件不利地域を中心に」 pp.323-347 農林統計出版、 東京