イタリアンライグラス草地における肉用肥育素牛の冬季放牧育成技術

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要約

4カ月齢の黒毛和種去勢雄牛をイタリアンライグラス草地で10月から翌年の5月まで約210日間放牧飼養し、0.76~0.82kgの高い日増体量を得る肉用肥育素牛の冬季放牧育成技術を開発した。

  • 担当:九州農業試験場・草地部・草地管理研究室
  • 連絡先: 096-242-1150
  • 部会名: 草地・永年草地・放牧
                九州、畜産・草地
  • 専門: 飼育管理
             栽培
  • 対象: 肉用牛
             牧草類
  • 分類: 指導

背景・ねらい

従来から、放牧は春に開始して秋に終了するといった固定的な考え方があった。そのため、九州低暖地でも肉用牛の放牧は春~秋に行われ、試験研究も夏季の高温条件を有効利用するための暖地型牧草地における放牧利用技術の開発に中心がおかれていた。しかし、暖地型牧草は乾物生産力が高い反面、栄養価が低いために、肉用肥育素牛の高増体育成は放牧条件下で達成できなかった。一方、冬季には温暖条件を活用して栄養価の高いイタリアンライグラスが栽培されているにもかかわらず、これを放牧利用するための技術開発がなされなかった。そこで、イタリアンライグラス草地を晩夏に造成して、秋から冬季間も含めて翌春まで放牧することにより、肉用肥育素牛を高増体育成する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • イタリアンライグラス(品種は早生~晩生品種を用いる)草地は毎年9月初旬に耕起造成し(播種量は4kg/10a、施肥は各地域の施肥基準に準ずる)、草高が約20cmに達する10月中旬から放牧を開始する。
  • 放牧期間は翌年の5月下旬までの約210日間とする。放牧圧は、イタリアンライグラス草地約7~10aに対して、4カ月齢の若齢牛1頭(100kg体重当たり5~8a)を目安として設定する(表1)。放牧方法は6~8牧区の短期輪換方式による昼夜放牧とし、滞牧日数は1~3日間とする。
  • イタリアンライグラス放牧草地における年間の追肥量は三要素で12kg/10a程度とし、約40日間隔で4回にわたって分施する。乾物生産量は約1500kg/10aであり、採草利用に匹敵する高い生産量が得られる。
  • イタリアンライグラスは秋と春に良く生育するが、冬には生育が停滞する(図1)。そのため、冬季には草量が不足する傾向があるので増飼する必要がある。また、放牧開始後2~3週間は増体が停滞するので、この間も増飼して放牧馴致するとよい。増飼量は設定した放牧圧により変動するが、1日当たり体重比で0.5%の濃厚飼料及び乾草を目安とする(表2)。なお、増飼時には家畜個体間の競争を回避するために連動スタンチョン等の利用が望ましい。
  • 4カ月齢の黒毛和種去勢雄牛の場合(秋から早春までは若干の増飼を行うが、以後終牧まで増飼せず)、期間平均で0.8kg内外の舎飼い条件に匹敵する高い日増体量が得られる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 西南暖地の低地におけるイタリアンライグラスの栽培適地で適用できる。
  • 春の余剰草は繁殖牛に放牧給与するか採草利用する。

具体的データ

表1 放牧試験開始時における供試家畜および供試草地面積

図1 イタリアンライグラス草地における放牧条件下の乾物重増加速度

表2 イタリアンライグラス草地に放牧した肥育素牛の日採食量および日増体重

その他

  • 研究課題名:体外受精による多子生産を基軸とした肥育素牛の新生産技術の開発
  • 予算区分 :別枠・経常
  • 研究期間 :昭和63年~平成6年
  • 発表論文等:九州低暖地における暖地型及び寒地型牧草地の組合せ利用 第3報、
                      日草誌(別)40、293-294
                      九州低暖地における暖地型及び寒地型牧草地の組合せ利用 第4報、
                      日草誌(別)40、295-296