コムギ葉面から分離された揮発性抑制物質生産糸状菌による植物病原菌の生育抑制
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要約
コムギ葉面から分離された糸状菌(菌株名Kyu-W63)が発生する揮発性物質によってコムギうどんこ病菌、コムギ赤かび病菌、イネいもち病菌、イネ紋枯病菌及びメロンつる割病菌の生育が顕著に抑制された。
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担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・流行機構研究室
- 連絡先: 096-242-1150
- 部会名: 病害虫
総合農業(生産環境)
- 専門: 作物病害
- 対象: 麦類・稲類
果菜類
- 分類: 研究
背景・ねらい
葉面微生物の特性を利用したコムギうどんこ病の防除技術の開発研究を進めている過程で、うどんこ病菌の生育を抑制する糸状菌を発見した。そこでこの糸状菌の特性、うどんこ病菌に対する生育抑制機作と各種病原菌に対する抑制作用を検討した。
成果の内容・特徴
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圃場のコムギ葉面から分離された408菌株の糸状菌、酵母を用い、実験室内でコムギうどんこ病の発病に及ぼす影響を調査した結果、3菌株が強い発病抑制機能(菌糸生育抑制効果)を有していることが明らかになった(表1)。
- これら3菌株はショ糖加用馬鈴薯煎汁寒天培地、オートミール寒天培地等8種類の培地、殺菌コムギ稈上で胞子を形成せず種の同定を行うことができなかった。
- 3菌株の培地上における菌叢の形態は異なっていたが、抑制効果が安定していた1菌株(Kyu-W63)は培養菌叢から特有の芳香性の臭気を発生した。
- 菌叢とコムギ葉片の間に孔径0.5μmのメンブランフィルターを挿入した場合には抑制効果が発現し、活性炭を入れた場合には発現されなかったことから、Kyu-W63の発生する物質がうどんこ病菌の生育抑制に関与していることが明らかになった。
- Kyu-W63はコムギ赤かび病菌(図1)、イネいもち病菌(図2)、紋枯病菌、メロンつる割病菌(図3)の培地上での菌糸生育を抑制した。
成果の活用面・留意点
Kyu-W63はふすま培地で容易に増殖できるので、ビニールハウス等の閉鎖された条件下でのうどんこ病の防除に利用できる可能性がある。また、物質が同定されれば、これをコムギうどんこ病をふくむ各種病害防除に利用できる可能性がある。
具体的データ




その他
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研究課題名:コムギ葉面微生物を利用したコムギうどんこ病の防除
- 予算区分 :大型別枠(生態秩序)
- 研究期間 :成6年度(平成5~7年)
- 発表論文等:コムギ葉面から分離された3種の糸状菌によるコムギうどんこ病の発病抑
制、日植病報59(6)、1993