製めん適性に優れ耐倒伏性の強い小麦新品種「ニシホナミ」

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要約

小麦「ニシホナミ」は、農林61号に比べやや早生で耐倒伏性が優れる。穂発芽性は同程度の難である。製粉特性が農林61号よりやや優り、製めん適性は高く、特にめんの食感に優れる。福岡県で準奨励品種に採用。

  • 担当:九州農業試験場・水田利用部・小麦育種研究室
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:作物生産・水田作
  • 専門:育種
  • 対象:麦類
  • 分類:普及

背景・ねらい

小麦は、重要な土地利用型作物であり、早生・高品質・安定多収品種の育成が強く求められている。特に、実需者からは、国内産の主要な用途であるめん用としての加工適性が外国産小麦に比べて劣っており、その向上が求められている。このため、低アミロースでめんの食感の評価が高い関東107号と、めんの色が優れるミナミノコムギを交配親として用い、早い世代から低アミロース系統の選抜を行うことで、めん用の加工適性の高い小麦品種を育成しようとした。

成果の内容・特徴

ニシホナミ(交配組合せ:関東107号/ミナミノコムギ)は、次のような特性を有する。

  • 白ふ、有芒で、稈長・穂長は農林61号より短く、穂数は同程度である(表1)。
  • 粒色は褐色で、粒質は農林61号より硝子率が高いやや粉状質である。原麦粒の見かけの品質は農林61号と同程度である(表1)。
  • 播性の程度は2で、農林61号より出穂・成熟が2~3日早いやや早生種である(表1)。
  • 耐倒伏性は強で農林61号より優れる(表1)。
  • 小麦縞萎縮病、麦類萎縮病に強く、赤さび病にはやや強く、赤かび病とうどんこ病の耐病性は中である。穂発芽性は難である。
  • 収量は農林61号と同程度ないしやや優る(表1)。
  • 製粉歩留、ミリングスコアは農林61号よりやや優る(表2)。
  • 粉の白さ、明るさは農林61号よりわずかに低く、粉の色づきは同程度ないしわずかに高い。蛋白質含量は同程度で、灰分はわずかに低く、アミロース含量は低い(表2)。
  • ファリノグラムの特性は農林61号と同程度で、エキステンソグラムの特性は薄力的である。アミログラムの最高粘度は高く、ブレークダウンは大きい(表2)。
  • 製めん適性は農林61号に比べて高く、特に食感に優れる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 適応地帯は温暖地以西の平坦地、福岡県で準奨励品種に採用。
  • 栽培上の注意a.地力の低い圃場では収量があがりにくいので、やで地や少肥条件での栽培は避けるとともに、ドリル播き栽培で収量の確保に努める。b.赤かび病の耐病性が十分ではないので、開花期の防除に努める。

具体的データ

表1.ニシホナミの栽培特性

 

表2.製粉及び粉質の特性

 

表3.製めん適性

その他

  • 研究課題名:小麦の早生、良質、安定多収品種の育成、現地向き低アミロ高耐性品種の育成
  • 予算区分:経常・総合開発研究(高品質輪作)
  • 研究期間:平成7年(60年~平成7年)