打込み式代かき同時土中点播による直播水稲の耐倒伏性の強化
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要約
代かきと同時に打込み点播することにより、湛水直播水稲の耐倒伏性が向上する。一定の広がりを与えて点播状に播種した水稲は、生育中・後期に株状の生育をし、かつ1株穂数が多く、根張りが強固となる。
- 担当:九州農業試験場・企画連絡室・総合研究第1チーム
- 連絡先:0942-52-3101
- 部会名:総合研究、作物生産、水田作
- 専門:栽培
- 対象:稲類
- 分類:指導
背景・ねらい
水稲の湛水直播栽培は稲作の省力・低コスト化技術として開発・普及されているが、省力性の高い散播直播栽培では播種深度が浅く、転び苗や浮き苗が発生し易く、また生育後期において転び型倒伏も発生し易く、収量変動の大きな要因となっている。そこで、代かき同時播種によって省力化を図りつつ、同時に打込み点播あるいは条播を可能とする播種機を開発し、同機を用いて播種した点播および条播水稲について、倒伏に関与する押し倒し抵抗値、根張り等を調査した。なお、移植水稲も参考にして一部調査に加えた。
成果の内容・特徴
- 打込み式の代かき同時土中点播栽培では、打込まれた種子の分布がほぼ楕円状になり、条方向への株幅(長径)が8センチメートル前後、これと直角の幅(短径)が5センチメートル前後で(図1)、生育中・後期には株状の生育をする。また、種子の打込み面が広く、1株穂数が多くなり、根張りが強固となる。
- 代かきと同時に打込み播種を行うため、1株内でも出芽深の変異がかなり大きくなるが、表層近くに分布するものは少ない(図2)。
- 根系の発達部位は移植栽培に比べて浅くなるが、株当たりの根数は多い傾向である(図3)。
- 点播直播水稲は、条播直播水稲に比べて押倒し抵抗値が大きく(図4)、また転び型倒伏の様相もほとんど認められないことから、打込み式の点播によって湛水直播水稲の耐倒伏性は強化される。
成果の活用面・留意点
- 湛水直播水稲栽培の安定化が図られる。
- 上記の成果は、代かき同時土中播種機による播種(点播・条播)で、麦作跡水田(灰色低地土)で得られたもので、播種後10日間の日平均気温が21.0度であった。
- 代かき水は通常より少な目とし、麦稈等の浮遊のない程度にする。
- 播種後は自然落水させ、出芽時まで落水管理した。
- 点播区の収量はヒノヒカリが62.7キログラム/アール、ユメヒカリが66.1キログラム/アールであり、条播区ではヒノヒカリ及びユメヒカリとも60.0キログラム/アールであった。
具体的データ




その他
- 研究課題名:湛水直播における耐倒伏性の強化方策及び安定生産技術の開発
- 予算区分:総合的開発研究(次世代稲作)
- 研究期間:平成7年度(平成7年~9年)
- 発表論文等:1.水稲の代かき同時土中直播栽培の確立に関する研究、2.点播水稲と条播水稲の押倒し抵抗の比較、日本作物学会第201回講演会