夏播き年内どりサイレージ用極早生えん麦「はえいぶき」

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要約

暖地で、8月下旬または9月上旬に播種し、年内出穂させて収穫する夏播き栽培に適したサイレージ用えん麦の新品種を育成した。本品種は、秋の出穂日が「アキワセ」よりも約3日早い極早生で、収量は10%程度高く、乾物率も高い。

  • 担当:九州農業試験場・草地部・牧草育種研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:草地・育種、畜産・草地
  • 専門:育種
  • 対象:麦類
  • 分類:普及

背景・ねらい

近年、西南暖地で夏作の長大型飼料作物の栽培が早期化することに伴って、夏から冬に安定して栽培できる飼料作物が求められている。夏播きえん麦は、夏から秋の台風を回避し、高温・乾燥条件下でもイタリアンライグラスより安定して生長するので、夏播きでの利用が増えており、既存品種よりさらに出穂が早く、年内に乳熟期以降のステージに達する極早生の安定・多収品種が求められている。そこで、夏播き栽培で年内利用に適したえん麦の極早生の安定・多収品種を育成しようとした。

成果の内容・特徴

  • 夏播きで安定して出穂する「Guelatao」を種子親に「ハヤテ」を花粉親として交配を行い、集団育種法によって選抜、固定した。
  • 秋の出穂日は3場所3か年平均値で「アキワセ」よりも3日、「ハヤテ」よりも10日早い極早生品種で、夏播きで年内収穫することに適している(表1)。
  • 夏播きでの乾物収量の「アキワセ」比は113で、とくに秋の気象条件が不安定で「アキワセ」が低収の場合にも減収程度が小さい安定・多収品種である(表2)。
  • 夏播きでの収穫時の乾物率は「アキワセ」よりも3%程度高い(表1)。
  • 夏播きでの収穫時の草丈は「アキワセ」よりも10センチメトール程度低い短稈品種である。茎数は「アキワセ」よりも多く、葉重割合が低い(表1)。
  • 冠さび病抵抗性は「アキワセ」と同程度の「弱」である(表1)が、現在までの夏播き試験で収量に影響するような例はなかった。
  • 育成地の秋播き採種試験における春の出穂及び種子の成熟期は「アキワセ」及び「ハヤテ」よりも早く、梅雨入り以前に確実に採種できる。草姿は短稈で、小さい穂を多数つける。種子収量は「アキワセ」よりもやや高い(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 「九州2号」の栽培適地は九州及び瀬戸内海地域などの低標高の畑地である。また、早期水稲の裏作としても栽培が見込まれる。普及見込み面積は約4,000ヘクタールである。
  • 「九州2号」は、高温期(熊本では8月25日以前)に播種すると栄養生長の期間が短縮して低収になることがあるので、南九州では9月1日、北九州でも8月25日以降に播種するようにする。また、播遅れによる減収の程度は従来の夏播き品種よりも小さいが、安定・多収のために適期播種を励行する。

具体的データ

表1.夏播きにおける「はえいぶき」の特性

 

表2.乾物収量とその「アキワセ」比(%)

 

表3.採種性及び関連形質

 

その他

  • 研究課題名:暖地向き青刈りえん麦品種の育成
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成3年~7年)