影響関係図による農産物の地域間流通構造の把握法
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要約
農産物の地域間輸送に関するデータから、地域間ネットワーク分析による影響関係図を作成することにより、作表等では把握が困難な地域間の流通構造を視覚的に把握することができる。
- 担当:九州農業試験場・農村計画部・市場流通研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:総合農業(経営)、農業経営
- 専門:経営
- 分類:研究
背景・ねらい
農産物の生産地域から消費地域への流通構造を把握するにはクロス表が用いられるが、年次間比較によりその変化を把握するためには、クロス表だけでは不十分な場合も多い。そこで、それらを視覚的に把握することのできる簡便な方法を検討した。
成果の内容・特徴
- 地域間ネットワーク分析では、クロス表(表側が生産地域、表頭が消費地域)を用いて、生産地域からみた消費地域との関係を、消費地域の入荷量(クロス表の縦計)に占める出荷量の割合が一定の水準(閾(いき)値)以上であることで判定し、関係の地域的広がりをその消費地域数で把握する。同様に、消費地域からみた生産地域との関係を、生産地域の出荷量(クロス表の横計)に占める入荷量の割合が閾値以上であることで判定し、関係の地域的広がりはその生産地域数で把握する。
- 閾値を大きく設定すると地域数は減少するが、地域数が少なくなると流通構造の把握はかえって困難になる。また、閾値を小さく設定するほど地域数は増加するが、地域間の関係は煩雑になる。指定野菜について、地域間の流通構造の変化と品目間の特徴を把握するための閾値の設定は、5%前後が適当であった(図1)。
- 産業の集中度分析で用いられるハーフィンダール指数(HI指数:ここでは地域内流通を除くシェアの自乗和)を、地域間流通の偏りを示す指標(100に近いほど特定の地域の流通に依存する割合が大きい)として表示するとともに、地域を区分した地図上で影響関係図を作成することにより、地域間流通の構造をより的確に把握できる(図2、3)。
- だいこんの作図例から、生産地域からみた消費地域との関係の変化では、北海道、九州地域の消費地域数の増加が顕著であり、九州地域では出荷地域をより特化させていることがわかる。また、消費地域からみた生産地域との関係では、関東、近畿地域を中心に関係地域数は増加しているが、関東地域では特定の生産地域との結びつきが強まる方向に、近畿地域では特定の産地との結びつきが弱まる方向に推移していることがわかる。
成果の活用面・留意点
農産物に関して影響関係図を作図できるデータとしては、米では『食糧管理統計年報』(食糧庁)、『自主流通情報センター年報』(自主流通情報センター)の都道府県間輸送量、野菜果実では『野菜生産出荷統計』、『果実生産出荷統計』、『産地別卸売統計』(農林水産省統計情報部)等があるが、表頭と表側の地域区分が必ずしも一致していない統計もあるため、一致するように事前にデータを加工する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:野菜の地域別需給変動要因の解明と地域別需給変動予測
- 予算区分:特研(野菜需給)
- 研究期間:平成7年度(平成5~7年)
- 発表論文等:野菜流通の地域間ネットワーク、農業構造の計量分析、富民協会、254-267、1994.