イチモンジカメムシの卵寄生蜂 Telenomus triptus の寄生行動の特徴

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要約

イチモンジカメムシの卵寄生蜂 Telenomus triptus は幅広い齢期の寄生卵に寄生可能であり、寄生卵塊のほとんどすべての卵に寄生するまで卵塊に留まる。また、マーキングによる効率的な寄生行動により野外で高い寄生率を実現している。

  • 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・害虫行動研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:病害虫
  • 専門:作物害虫
  • 対象:昆虫類
  • 分類:研究

背景・ねらい

イチモンジカメムシの発生生態を解明していく中で、卵寄生蜂Telenomustriptusはイチモンジカメムシの個体群制御要因として重要な働きをしていることが明らかとなった。特に注目すべき点は、本種による寄生率は寄生卵塊のサイズにかかわらず高く、攻撃された卵塊のほとんどすべての卵が寄生されていることである。雌蜂が野外で高い寄生率を実現できる要因を行動面から検討し、天敵としの能力を評価する。

成果の内容・特徴

  • 本種はいかなる発育段階のカメムシ卵に対しても寄生し、孵化が24時間内に始まる4日齢の寄生卵塊に対しても高い寄生率(75%程度)を示す(図1)。
  • 雌蜂はカメムシ卵に産卵後、卵の表面に産卵管でマーキングを行い、このマーキング物質を手がかりに既寄生寄生卵を識別する。このマーキングは寄生72時間後でも有効であり、カメムシの全卵期間をカバーする(図2)。
  • 雌蜂は、日当り産卵能力(平均25卵)を越えた卵塊サイズが30卵以上の大きなカメムシの卵塊に遭遇した場合、ほとんどすべての卵に寄生するまで数日間その卵塊に留まり寄生率を高める(図3)。すなわち、卵寄生蜂T.triptusは、幅広い齢期の寄生卵に寄生が可能であり、寄生卵塊に対する強い執着とマーキングによる効率的な寄生行動により、野外で高い寄生率を実現している。

成果の活用面・留意点

卵寄生蜂T.triptusはイチモンジカメムシの天敵として能力が高く、今後カメムシの生物的防除を指向するうえで有力な素材となる。

具体的データ

図1.イチモンジカメムシ卵塊の日齢とT.triptusの寄生率。

 

図2.マーキング後の経過時間とT.triptus雄蜂の産卵選択。

 

図3.ダイズ畑に設定したイチモンジカメムシ卵塊に対するT.triptusの行動と寄生率。

 

その他

  • 研究課題名:天敵昆虫(卵寄生蜂)の利用による大豆害虫カメムシ類の防除技術
  • 予算区分:一般別枠(安全性向上)
  • 研究期間:平成7年度(平成3~7年)
  • 発表論文等:Hosthandlingbehavioroftheeggparasitoid,TelenomustriptusNixon(Hymenoptera:Scelionidae),ofeggmassesofthestinkbug,PiezodorushybneriGmelin(Heteroptera:Pentatomidae),inasoybeanfield.Appl.Entomol.Zool.30(4).1995.HosthandlingbehavioroftheeggparasitoidTelenomustriptustotheeggmassesofthestinkbugPiezodorushybneri.Entomol.exp.appl.(投稿中)