金属プロテアーゼ遺伝子を有する土壌細菌の選択的検出法の開発

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要約

Serratia marcescensの菌体外プロテアーゼ遺伝子構造を基に作成したDNAプライマーとDNAプローブにより、土壌中の金属プロテアーゼ遺伝子を有する微生物を培養せずに直接選択的に検出することができる。

  • 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌微生物研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:農業生態、生産環境
  • 専門:土壌
  • 分類:研究

背景・ねらい

土壌微生物の生態を調べるのによく用いられてきた希釈平板法には、培養できない微生物の影響を評価できないという欠点がある。また、特定の土壌微生物を検出するのに適した選択培地を開発するのは容易ではない。ここでは、土壌中の物質循環の基本となる土壌プロテアーゼの供給源として重要な金属プロテアーゼを有する特定の土壌微生物を選択的に検出するために、金属プロテアーゼ遺伝子の塩基配列に基づいた検出手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 家畜スタリーを施用した土壌から、主要なプロテアーゼ生産菌としてS.marcescens(s132株)を単離した。
  • s132株が生産するプロテアーゼの酵素特性・N末端アミノ酸配列は既知の金属プロテアーゼであるセラチオペプチダーゼと一致していた。
  • 合成DNAプライマー(SR10、SF5)を用いて、s132株の全DNAを鋳型としたPCR反応により、セラチオペプチダーゼと高い相同性があるDNA(1.68Kb)を増幅することができた(図1)。
  • 増幅したDNAをジゴキシゲニンでラベルすることにより、DNAプローブを作成した。
  • SR10及びSF5を用いて、プロテアーゼを生産する各種細菌を全DNAを鋳型としたPCR反応の結果S.marcescens(s112、s131株)及びグラム陰性細菌(m110株)の持つ金属プロテアーゼ遺伝子のみが増幅された(表1)。
  • 既知量のs132株を加えた殺菌土壌から直接抽出したDNAを鋳型としてPCR反応を行い、DNAプローブを用いて金属プロテアーゼ遺伝子を検出した結果、検出限界は100CFU/グラム乾土である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 非殺菌土壌の場合には、DNAプローブと反応する低分子のバンドが現れるが、金属プロテアーゼの検出には影響しない(図2、レーン2)。
  • 多量の腐植を含む火山灰土壌に適応するためには抽出条件の検討が必要である。

具体的データ

図1.SR10、SF5で増幅されたS.marcescens(s132株)の金属プロテアーゼ遺伝子の部分塩基配列。

 

表1.SR10,SF5を用いた各種プロテアーゼ生産菌のPCR反応。

 

図2.土壌から抽出したDNAを鋳型としたPCR反応による金属プロテアーゼ遺伝子の直接検出。

 

その他

  • 研究課題名:RT-PCR法を使用した土壌細菌の生態解明に関する研究
  • 予算区分:原子力
  • 研究期間:平成7年度(平成5~7年)
  • 発表論文等:PreparationofDNAprimersandDNAprobeforthedetectionofmetalloproteasegenesinsoil.lnternationalSymposiumontheExplorationofMicrobialDiversity.1995.