段畑の石垣の反射日射の効果と形態係数を用いたその定量的な評価
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要約
段畑傾斜地の石垣周辺では石垣からの反射日射により日射強度が大きい。地温も高く、蒸発量が多いため土壌の乾燥化が進み易い。反射日射の影響を形態係数で表せ、これを指標として石垣周辺の日射強度を推定することができる。
- 担当:九州農業試験場・農村計画部・資源評価研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:総合農業(生産環境)
- 専門:農業気象
- 分類:研究
背景・ねらい
農地の有利な地形条件を利用するため、沿岸傾斜地でよくみられ、柑橘類の品質向上に寄与しているといわれる段畑の石垣周辺の日射環境について、住宅用サイディングボード(以上、壁面)を石垣と想定し、壁面南側(図1)の日射環境等の有利な特性について検討した。
成果の内容・特徴
- 石垣によく使われるカコウ岩とほぼ同様の反射スペクトルを示す南向きの壁面周辺では、反射日射の影響のない場所の日射強度に比べて、反射日射の影響で日射強度が大きい。反射日射の影響を受ける壁面周辺の日射強度(相対値)は反射日射の影響の度合を表す地面から壁面の形態係数で表せ、形態係数を用いることによって石垣からの反射日射の強度を推定することができる(図2)。
- 晴天日の地温の日変化は、日射強度の増加にともない、壁面に近い形態係数が大きい地点ほど高く推移する。特に、夜間の壁面に近いA地点と壁面から遠いC地点の地温の差が大きい(図3)。
- 壁面周辺では日射強度が大きく、地温が高いため蒸発量も壁面周辺で多く(図4)、潅水、降水時の水分補給量を均一と仮定すれば、土壌の乾燥化が進みやすい。これは、糖酸比の高い柑橘類の生産条件に適合している。
成果の活用面・留意点
石垣の日射の反射率及び地面からみた石垣の形態係数を用いることにより、段畑における南向きの石垣の反射日射強度を定量的に推定することができる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:沿岸傾斜地における気象資源が作物生産に及ぼす影響の定量化
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成7年度(5~7年)
- 発表論文等:段畑における作物の波長別日射環境、九州の農業気象、第2輯第3号(1994)、段畑の石垣を想定した壁面周辺の微気象観測、九州の農業気象、第2輯第4号(1995)