小麦の穂発芽抵抗性に関連する分子マーカーの選抜
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要約
小麦の半数体倍加系統を用い、穂発芽抵抗性に関連する分子マーカー(RAPDマーカー)を選抜した。その結果10個のRAPDマーカーが抵抗性を高め、5個が抵抗性を低めるのに関連し、両親の抵抗性を選抜するマーカーを見いだした。
- 担当:九州農業試験場・水田利用部・耐性育種法研究室
- 連絡先:0942-52-5055(内線300)
- 部会名:総合農業(作物生産)、植物バイテク
- 専門:育種
- 対象:麦類
- 分類:研究
背景・ねらい
小麦の穂発芽抵抗性には多数の遺伝子が関与するとされ、環境と年次により抵抗性の程度が変動し易く、選抜にはかなりの時間と労力を要する。分子マーカーを用いた穂発芽抵抗性の遺伝分析は、品種・系統の遺伝子構成を詳細に分析でき、実用品種を育成する際に役に立つ。また穂発芽抵抗性に関連する分子マーカーは間接選抜の指標となり、効率的な選抜が可能となる。本研究では、小麦の穂発芽抵抗性に関連する分子マーカー(RAPD;RandomAmplifiedPolymorficDNAマーカー)の選抜を行った。
成果の内容・特徴
- フクホコムギの穂発芽抵抗性は「極強」、Oligoculmは「弱」で、F1は中間の「やや強」である(図1)。フクホコムギとOligoculmのF1からトウモロコシ法で育成した314系統の半数体倍加(DH)の穂発芽抵抗性は「極強」~「弱」で連続的に変異することから、多数の遺伝子が関与する量的形質である(図1)。
- 50種のランダムプライマー(Operon社製、10mer)を鋳型にTaqPolymerase(Promega社製)を用いたPCRにより、フクホコムギとOligoculmの間に65個のRAPD多型が認められる。そのRAPDマーカーの分離と穂発芽抵抗性とのt-検定による分析では、10個のRAPDマーカーが穂発芽抵抗性を高める傾向に関連し、他の5個が穂発芽抵抗性を低める傾向に関連する(図2)。
- 穂発芽抵抗性を高めるRAPDマーカーは、4連鎖群(No.5,6,13,14)と1単独因子に、穂発芽性を低めるRAPDマーカーは、2連鎖群(No.4,12)と1単独因子に座乗する(図2)。
- No.13及び14連鎖群の穂発芽抵抗性を高めるRAPDマーカーでは、抵抗性系統の70%以上がフクホコムギ型で、フクホコムギ由来の抵抗性の選抜に有効である。一方、No.4及び12連鎖群のマーカーでは、抵抗性系統がOligoculm型、穂発芽性系統がフクホコムギ型の傾向があり、Oligoculm由来の抵抗性の選抜に有効である。
成果の活用面・留意点
- 穂発芽抵抗性の選抜マーカーは、両親にDNA多型が認められる組合せで適用できる。
- 交配に用いる母体のもつ分子マーカーの型と穂発芽抵抗性の遺伝子型を確認する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:胚朱培養及び葯・花粉培養を利用した半数体作物の育種利用技術の開発
- 予算区分:地域バイテク・経常
- 研究期間:平成7年度(平成3~7年)
- 発表論文等:ScreeningofRAPDmakersassociatedwithpre-harvestsproutingresistanceinwheat.Proc.7thInt.Symp.onPre-HarvestSproutinginCereals1995(inpress).コムギの穂発芽抵抗性及び赤かび病抵抗性に関連するRAPDマーカーの検索、育種学雑誌、45巻(別2)1995.