広域市町村連携による地域振興の特徴

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要約

都市農村交流、若者定住促進等、各町村ごとに地域活性化に向けてさまざまな取り組みがなされてきたが、過疎山村等では活力低下、生産力低下の中で、同じ境遇にある町村が連携を取り、活性化を図る動きが見られる。広域的な連携は産地形成等の個別的なものから地域全体の振興へと統合化してきている。

  • 担当:四国農業試験場・地域基盤研究部・地域計画研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:営農
  • 専門:経営
  • 分類:研究

背景・ねらい

これまで、多くの市町村で都市農村交流、若者定住促進等、地域活性化に向けてのさまざまな取り組みがなされてきた。しかし、過疎山村等では活力低下、生産力低下の中で地域農林業の維持発展が難しくなり、農協の広域合併化や事業の拠点化、総合化に伴い、同じ境遇にある市町村がいくつか連携することで地域の活性化を図る動きが現れてきた。このような広域市町村連携の特徴や組織の運営状況、今後の課題を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 広域市町村連携は、全国的な機能集団である「サミット連携」と局地的な地縁集団の性格が強い「近隣町村の連携」の大きく2つに分けられ、これらの期待される効果を取りまとめたものが表1のようになる。
  • 「サミット連携」は、それぞれの市町村を取り巻く状況が異なり、問題点は共通する部分もあるが解決策には独自性が求められる。また、日常的な繋がりにはなりにくく情報の交流が中心であるため、宣伝効果はあるが具体的な効果は表れにくいと言える。
  • 「近隣町村の連携」は、四国は特に地形が急峻であるため行政的な郡の繋がりよりも谷筋、川筋といった流域的な繋がりが強く、問題点の共通する町村が地縁を活用して形成してきており、過疎山村で多く見られる(表2)。これら連携組織は総合化の動きを示し、個別具体的なものから地域全体の振興組織が形成される一方で、地域内での連携組織間の繋がりによる総合化の動きも見られ、他分野への波及効果も現れている。
  • 事業は地域内で調整を取り、各町村ごとに個別対応されるケースが多い。これは、広域的な事業は意思統一を図るのが難しいためで、状況のかなり緊迫した地域では事業規模や効果が大きくなることから、広域事業への要望が少しずつ増えてきている。
  • 過疎山村に限らず都市近郊地域においても、地域の連携が都市への一極集中により失われてきているため、地域連帯を取り戻そうとする連携や、各町村の特長を生かして地域全体の個性を作り出そうとする連携も出てきている(表2)。
  • 広域的な連携は活動期間の短いものが多く、各市町村独自の動きと広域連携による動きの整理・調整がついていない地域が多いため、これまで各市町村で行ってきた対策を広域化の中でどのように生かし、維持発展させていくか、また、組織間の連携強化、総合化の中での他分野への波及効果を生かすことが最も重要である。広域連携は、市町村数の多い方がスケールメリットを期待できるが、各市町村の意見の集約が困難になり、行動が制約されてしまう。

成果の活用面・留意点

広域的市町村連携による地域振興の現状とその効果の把握、また、広域化が進む中での地域再編方策を考えるに際して参考となる。

具体的データ

表1.広域的な連携により期待される効果

 

表2.近隣町村の連携による地域振興事例

 

その他

  • 研究課題名:四国地域における市町村ネットワークの解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成5~7年)