酸素発生資材(CaO2)で被覆した水稲催芽種子の貯蔵条件による土中出芽性の変化

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要約

酸素発生資材被覆の水稲催芽種子は、0.5~2時間の陰干し後、摂氏5~10度で密封貯蔵することにより、土中出芽力が高く維持される。この場合、出芽率に品種間差異が認められるが、25日間程度の貯蔵でも出芽率の低下は10~20%に留まる。

  • 担当:九州農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:総合農業(総合研究)、水田作
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

水稲の湛水直播栽培では、代かき土中に埋没播種した種子の安定出芽をはかるために酸素発生資材(過酸化カルシウム粉粒剤:CaO2 16%含有)で被覆した種子を播種している。この場合、播種当日から数日前に被覆作業が行われていることが多く、繁忙期における作業競合を強める要因になっている。そこで、酸素発生資材被覆種子の貯蔵に伴う土中出芽力の低下を数種条件下で検討した。

成果の内容・特徴

  • 酸素発生資材で被覆した水稲催芽種子(鳩胸状に催芽)の土中出芽力は摂氏5~10度で貯蔵で高く維持される(表1、表2)が、摂氏10度貯蔵がより適温とみられる。
  • 貯蔵する酸素発生資材被覆種子は0.5~2時間程度の陰干し(被覆作業終了時の種子重量の95~97%程度まで陰干し:以下、半湿種子と記す)を行い、白化するまで乾燥させない(図1)。
  • 被覆した半湿種子の水分低下を抑えるためビニール袋等に入れて密封貯蔵する。
  • 貯蔵に伴う土中出芽力の低下には品種間差異が認められるが、酸素発生資材で被覆した半湿種子は、摂氏10度で25日間貯蔵しても10~20%の出芽率の低下に留まる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 水稲湛水直播に供用する酸素発生資材被覆種子の貯蔵に際しての参考資料となる。
  • 試験結果は以下の条件下で得られたものである。
    1)供試種子は、バインダー収穫の種子で、比重1.13で選別した。これを種子消毒し、浸漬・催芽後、乾燥種子重量の2倍の酸素発生資材で被覆した。
    2)出芽試験は、ポット土壌表面に被覆種子を播種し、播種深度が1cmになるように泥土を注入覆土し、摂氏20度・落水状態で行った。ポット当たりの播種粒数は150粒とした。

具体的データ

表1 酸素発生資材被覆種子の貯蔵温度と出芽との関係(1995年)
表1 酸素発生資材被覆種子の貯蔵温度と出芽との関係(1995年)

 

表2 酸素発生資材被覆種子の貯蔵温度と出芽との関係(1996年)
表2 酸素発生資材被覆種子の貯蔵温度と出芽との関係(1996年)

 

図1 酸素発生資材被覆種子の陰干し程度と貯蔵後の出芽との関係
図1 酸素発生資材被覆種子の陰干し程度と貯蔵後の出芽との関係

 

図2 酸素発生資材被覆種子の貯蔵に伴う出芽率低下の品種間差
図2 酸素発生資材被覆種子の貯蔵に伴う出芽率低下の品種間差

 

その他

  • 研究課題名:代かき同時播種直播水稲の出芽・苗立ちの安定化技術の開発(経常)
                      土中出芽性からみた催芽種子の貯蔵限界の解明(重点基礎)
  • 予算区分 :経常・重点基礎
  • 研究期間 :平成8年度(平成6~9年)