非選択性茎葉処理除草剤による早期水稲収穫後のショクヨウガヤツリの塊茎増殖防止法

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要約

暖地の早期水稲栽培田に発生する帰化雑草ショクヨウガヤツリは主として稲刈り後の不作付期間に翌年の発生源となる塊茎を5,000個/平方メートル程度生産する。開花期のショクヨウガヤツリに対する非選択性茎葉処理除草剤の散布は塊茎生産を停止させ、特にグリホサート液剤は散布時までに生産された塊茎の萌芽率を低下させる。

  • 担当:九州農業試験場・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:総合農業(作物生産)、水田作
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

世界的な畑の強害雑草として知られているショクヨウガヤツリ(別名キハマスゲ、学名Cyperus esculentus L.)が、1980年代半ばに九州南部の早期水稲栽培田に侵入し、定着している。周辺地域に分布が拡大する前に、主たる繁殖源である塊茎の増殖の実態を明らかにし、その増殖防止技術を確立することが緊急に求められている。

成果の内容・特徴

  • ショクヨウガヤツリの多発する早期水稲栽培田では、中干し頃よりショクヨウガヤツリの発生・生育が再開するため、水稲生育の初・中期に除草剤を使用しても十分な防除は困難である(図1)。
  • ショクヨウガヤツリは水稲収穫の約30日前より塊茎を形成し始め、稲刈り時には2,000個/平方メートル程度の塊茎を生産する(図1)。水稲収穫後不作付けのまま放置された多発水田では、稲刈りの3ケ月後頃までに約5,000~6,000個/平方メートルの塊茎を生産する(図1、表1)。
  • 稲刈り約40日後の開花期に非選択性茎葉処理除草剤を散布することにり、茎葉部分を枯らして塊茎生産を停止させることができる。特にグリホサート液剤は散布時までに生産された塊茎の萌芽率を低下させる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 早期水稲栽培田のショクヨウガヤツリの多発する部分に適用できる。
  • グリホサート液剤の塊茎萌芽率に対する効果はショクヨウガヤツリ茎葉部への付着量、塊茎への転流・移行量によって左右されることから、散布時における同雑草の茎葉部の大きさや散布後の気温の高低により効果の変動する場合がある。
  • ショクヨウガヤツリは畦畔や畑でも生育可能なことから、隣接部に発生の認められる場合はその防除にも努める。

具体的データ

図1 早期水稲栽培田におけるショクヨウガヤツリの生育及び塊茎生産
図1 早期水稲栽培田におけるショクヨウガヤツリの生育及び塊茎生産
(96年3月上旬に大量の塊茎を埋め込んだ九州農試水田利用部内の水田での調査結果)

 

表1 除草剤散布時及び抜き取り調査時のショクヨウガヤツリの生育と塊茎生産(鹿児島県大浦町現地多発水田での調査結果)
表1 除草剤散布時及び抜き取り調査時のショクヨウガヤツリの生育と塊茎生産(鹿児島県大浦町現地多発水田での調査結果)

 

表2 ショクヨウガヤツリの塊茎生産と塊茎の萌芽率に及ぼす非選択性茎葉処理除草剤散布の影響(鹿児島県大浦町現地多発水田での調査結果)
表2 ショクヨウガヤツリの塊茎生産と塊茎の萌芽率に及ぼす非選択性茎葉処理除草剤散布の影響(鹿児島県大浦町現地多発水田での調査結果)

 

その他

  • 研究課題名:水田強害帰化雑草の生存戦略の解明と制御技術の開発
  • 熱帯・亜熱帯強害性雑草の水田への侵入・定着条件の解明
  • 予算区分 :特別研究(強害雑草)、一般別枠(地球環境)
  • 研究期間 :平成8年度(平成5~8年)