帰化雑草コヒメビエの水田条件での出芽特性とその防除

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要約

帰化雑草コヒメビエの種子の発芽は摂氏15度程度の低温や水中条件では不良である。湛水代かき条件での出芽は在来のノビエに比べて劣り、出芽深度も1cm程度であるが、一時的な落水によって深い位置からも出芽可能となる。既存の除草剤はコヒメビエに対して高い殺草効果を示す。

  • 担当:九州農業試験場・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:総合農業(作物生産)、水田作
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

九州地域の水田に近年侵入したインド原産のイネ科ヒエ属雑草コヒメビエ(Echinochloa colonum Link.)に対する防除方法の確立は急務である。そのため在来のノビエとの比較によって生態的特性を明らかにし、耕種的防除のポイントを明確にする。また、従来のノビエに有効な既存の除草剤による殺草効果を検討した。

成果の内容・特徴

  • コヒメビエ種子はろ紙上では摂氏15~30度で発芽可能であるが、摂氏15度程度の低温で発芽率が低下し、水中条件ではほとんどが発芽しない(図1)。
  • コヒメビエは在来のノビエに比べて、湛水し代かきがなされた条件での出芽に劣り(図2)、常時湛水条件での出芽深度は1cm程度であるが、一時的な落水によって5cm以上の深い位置からも出芽可能となる(表1)。
  • 在来のノビエに対して有効な既存の除草剤はコヒメビエに対しても高い殺草効果を示す(表2)。

成果の活用面・留意点

  • コヒメビエは水中や湛水代かき条件での発芽や出芽が劣ることから、コヒメビエが侵入した水田では田面が露出しないような水管理を行い発生を抑制する。
  • 除草剤の使用については、在来種に対して有効な既存の剤で充分な防除効果が期待できるので、基準通り使用する。
  • 中干しや湛水直播田での芽干しはコヒメビエの発生を促進させるので、その後の防除対策を講じる必要がある。

具体的データ

図1 種子の発芽条件
図1 種子の発芽条件

 

図2 湛水代かき条件での出芽率
図2 湛水代かき条件での出芽率

 

表1 コヒメビエの出芽深度の頻度分布と最大出芽深度に及ぼす水管理の影響
表1 コヒメビエの出芽深度の頻度分布と最大出芽深度に及ぼす水管理の影響

 

表2 コヒメビエに対して有効な除草剤の種類と処理時期
表2 コヒメビエに対して有効な除草剤の種類と処理時期

 

その他

  • 研究課題名:熱帯・亜熱帯性強害雑草の水田への侵入・定着条件の解明
                      水田強害帰化雑草の生存戦略の解明と制御技術の開発
  • 予算区分 :一般別枠(地球環境)、特研(強害雑草)
  • 研究期間 :平成8年度(平成2~8年)