7S蛋白質を欠失したツルマメ系統

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要約

天草下島から収集したツルマメから、7S蛋白質を欠失した系統を見いだした。この特性は単一優性遺伝子により支配されている。この系統は高11S蛋白質ダイズ育成に使用できる。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・大豆育種研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:作物生産・生物資源、畑作
  • 専門:遺伝資源
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

7S蛋白質と11S蛋白質はダイズ子実中の総蛋白質のうち約70%を占める主要貯蔵蛋白質である。11S蛋白質は7S蛋白質に比べ含流アミノ酸量が多く、 栄養的に優れるだけでなく、ゲル強度にも優れ、豆腐加工適性が高い。また11S蛋白質含量は7S蛋白質含量と逆相関の関係にあることが知られており、高 11S蛋白質ダイズの育成のために低7S蛋白質の遺伝資源が求められてきた。近年突然変異により7Sの全てのサブユニットを欠失した系統が得られたが、こ の突然変異系統は劣性の致死変異であり、ヘテロでしか維持できず実用化は難しい。ツルマメはダイズの野生種として知られ、容易にダイズと交配できる。

成果の内容・特徴

  • 1992-94年に九州中部を中心に収集したツルマメ82系統を分析したところ、天草下島で収集した1系統に7S蛋白質を欠失した系統を見出し、これにQT2の系統名を付した(図1)。
  • この系統の持つ7S蛋白質欠失性は単一優性遺伝子によって支配されている(表1)。
  • 優性遺伝による蛋白質欠失性はダイズでは初めて見つかったもので、他の作物でも優性遺伝による蛋白質欠失性はほとんど見つかっていない。

成果の活用面・留意点

  • このツルマメを交配母本に用いることにより、低7S(高11S)蛋白質ダイズを育成できる。
  • ツルマメの形質を除くため、ダイズに数回以上戻し交配を行う必要がある。
  • 単一優性遺伝なので、従来知られている劣性の7Sサブユニット欠失変異より戻し交雑が簡単で、育種年限が短縮できる。

具体的データ

図1 QT2系統の電気泳動像
図1 QT2系統の電気泳動像

 

表1 普通大豆とQT2系統の交配後代の分離比
表1 普通大豆とQT2系統の交配後代の分離比

 

その他

  • 研究課題名:遺伝資源の収集・評価
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年(昭和55~平成9年)