暖地向きサイレージ用とうもろこしの高カロリー・極多収品種「九交B78号」の育成
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要約
中生に属する暖地向きサイレージ用とうもろこしのF1品種「九交B78号」を育成した。本品種は、ごま葉枯病等の主要病害抵抗性および耐倒伏性に優れ、乾雌穂重割合が高く、消化性にも優れる極多収品種である。九州・四国地域での春播き栽培用品種として普及が期待される。
- 担当:九州農業試験場・畑地利用部・飼料作物育種研究室
- 連絡先:0986-22-1506
- 部会名:草地・育種、畜産・草地
- 専門:育種
- 対象:雑穀類
- 分類:普及
背景・ねらい
わが国の飼料用とうもろこしでは、アメリカ等の導入品種が主として利用されているが、自給粗飼料の安定生産のためには国産優良品種の育成が不可欠である。
そのため、暖地向き安定・多収品種として、中生の晩に属する「はたゆたか」等を育成したが、さらに熟期別優良品種の育成が求められている。そこで、「はた
ゆたか」より早熟で、耐倒伏性および主要病害抵抗性に優れる多収F1品種を育成しようとした。
成果の内容・特徴
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「九交B78号」は、[Mi29」を種子親とし、「Na50」を花粉親として育成されたデント種×フリント種の単交雑一代雑種である。
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熟期は中生に属する。絹糸抽出期は「P3358」より1日遅く、中生の晩の「はたゆたか」および「P3472」より2日早い。草型はアプライトで、稈長および着雌穂高は「P3358」並かやや高く、「はやゆたか」および「P3472」よりやや低い(表1)。
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乾総収量およびTDN収量はともに「P3358」より10%以上高く、「はたゆたか」および「P3472」よりも多収な、極多収品種である。乾雌穂重割合は「P3358」よりやや高く、「はたゆたか」および「P3472」より高い(表1、図1)。
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茎葉および雌穂の酵素分解率がやや高く、地上部全体の酵素分解率は「P3358」を2%上回り、「はたゆたか」および「P3472」を4~5%上回る(表2)。
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耐倒伏性は強~極強で、「P3358」、「はたゆたか」および「P3472」並である(表1)。
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ごま葉枯病抵抗性は極強で、「はたゆたか」および「P3472」並であり、[P3358」より強い。紋枯病には「P3358」、「はたゆたか」および「P3472」並に強い(表1)。
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採種量は、雌雄畦比3:1で23kg/a以上が見込まれる。両親の開花期を合致させるためには、種子親を10日程度晩播する必要がある。
成果の活用面・留意点
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九州および四国地域の春播き栽培に適し、普及見込み面積は6,000haである。
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6月以降の晩播栽培には適さないので、5月下旬までに播種する必要がある。
具体的データ

表1 九州・四国地域における「九交B78号」の主要特性1)

表2 「九交B78号」の酵素分解率1)

図1 九州・四国地域における「九交B78号」のTDN収量の「P3358」比
その他
- 研究課題名:暖地向き飼料用トウモロコシの新品種育成
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成8年度(平成3~8年)