サイレージ用とうもろこし育種素材における茎部消化性の変異と遺伝
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要約
とうもろこし育種素材の茎部の高消化性分画含量には著しい変異がある。その遺伝には一般組合せ能力が重要で、中間親とF1組合せの間には正の相関がある。また、高消化性分画含量と乾雌穂重割合との間には負の相関がある。
- 担当:九州農業試験場・畑地利用部・飼料作物育種研究室
- 連絡先:0986-22-1506
- 部会名:草地・育種、畜産・草地
- 専門:育種
- 対象:飼料作物類
- 分類:研究
背景・ねらい
従来、サイレージ用とうもろこしでは乾雌穂重割合が高いほど栄養価が高いと考えられてきたが、最近、普及F1品種の茎葉消化性に顕著な品種間差異があることが判明した。また、茎葉消化性は着雌穂節直上節間の消化性と高い相関を示すことが明らかにされた。そこで、栄養価が高い品種を育成する上での基礎的情報を得るため、育種素材の茎部消化性の変異と遺伝を明らかにしようとした。
成果の内容・特徴
暖地向き育種母材改良集団、エリート自殖系統およびF1組合せの黄熟中期における着雌穂節直上節間の細胞内容物(OCC)および高消化性繊維(Oa)含量を酵素法で分析した。
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育種母材改良集団の(OCC+Oa)含量には6.6%の変異があり、フリント種で高くデント種で低い傾向がある(表1)。
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エリート自殖系統の(OCC+Oa)含量には25.7%の変異がある(表2)。
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OCCおよび(OCC+Oa)含量では一般および特定組合せ能力がいずれも有意であるが、一般組合せ能力が重要である。また、Oa含量では一般組合せ能力のみが有意である(表3)。このため、(OCC+Oa)含量にはF1組合せと中間親との間に正の相関がある(図1)。
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F1組合せの(OCC+Oa)含量と乾雌穂重割合との間には負の相関がある(図2)。したがって、地上部全体の栄養価を高めるためには、茎葉消化性と乾雌穂重割合を総合的に評価することが重要である。
成果の活用面・留意点
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高茎葉消化性品種を育成するための基礎資料として用いることができる。
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本成果はbm等の繊維の消化性に関与する主働遺伝子を利用する場合には適用できない。
具体的データ

表1 育種母材改良集団の茎部高消化性分画含量

表2 42エリート自殖系統の茎部高消化性分画含量

表3 茎部高消化性分画含量の組合せ能力についての分散分析表

図1 F1組合せとその中間親の茎部の(OCC+Oa)含量

図2 F1組合せに見られた茎部の(OCC+Oa)含量と乾雌穂重割合
その他
- 研究課題名:暖地向き飼料用トウモロコシ育種素材における茎部消化性の変異の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成8年度(平成6~8年)