九州の火山砕屑物に含まれる酸可溶性リン酸とその起源一次鉱物
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要約
九州の火山灰土壌地帯には酸可溶性リン酸(ブレイ2態リン酸やトルオーグ態リン酸)に富む火山砕屑物が各地に存在する。火山砕屑物から抽出されるこれらの形態のリン酸はアパタイト(リン灰石)起源である。これらの形態のリン酸は火山砕屑物の風化が進むとともに急激に減少する。
- 担当:九州農業試験場・生産環境部・上席研究官、土壌資源研
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:生産環境
- 専門:土壌
- 対象:
- 分類:研究
背景・ねらい
九州の火山灰土壌地帯には各地の火山から噴出した多量の火山砕屑物(火山灰、軽石、火砕流等)が堆積し、火山灰土壌の母材や基盤となっている。これらの火
山砕屑物の鉱物・化学的特性や風化と可給態リン酸分析に用いられる酸可溶性リン酸(ブレイ2態やトルオーグ態リン酸)との関係やその給源を明らかにする。
成果の内容・特徴
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雲仙・普賢岳、飯田、阿蘇4の各火砕流、桜島安永ボラ、開聞岳起源の開聞Cはブレイ2態やトルオーグ態リン酸に富む(表1)。
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火山砕屑物の全ケイ酸含量や全リン酸含量、一次鉱物組成とブレイ2態とトルオーグ態リン酸量とには関係が認められない(表1)。
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火山砕屑物のブレイ2態リン酸量とアパタイト(リン石灰、Ca(PO4)3(OH、F、Cl))含量とには正の関係がある(図1)。ブレイ2態とトルオーグ態リン酸に富む火山砕屑物のこれらの給源はアパタイト起源と考えられる。
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火山砕屑物のブレイ2態とトルオーグ態のリン酸は、火山砕屑物の風化が進むと(非晶質アルミニュウム(Al0)が増大すると)急激に減少する(図2)。
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火山砕屑物中のアパタイト(リン灰石)は小さく(数十μm)、他の一次鉱物に包含されて存在することが多い(写真1、写真2)。
成果の活用面・留意点
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アパタイト(リン灰石)に富む火山砕屑物は、細粒質で強酸性の赤・黄色土等の土性や酸性の改良資材となる可能性がある。
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火山砕屑物のブレイ2態とトルオーグ態のリン酸は一部の作物には有効である。
具体的データ

表1 火山砕屑物の鉱物・化学組成とブレイ2・トルオーグリン酸含量

図1 Bray2リン酸含量とアパタイト含量

図2 非晶質アルミニウム含量とBray2リン酸含量

写真1 桜島大正ボラの重鉱物のSEM像

写真2 写真1の鉱物表面のリンの分布
その他
- 研究課題名:火砕流由来土壌の生成・機能特性の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成8年度(平成4年~7年)