鉄欠乏アルファルファ根の分泌物による根粒菌の生育促進
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要約
鉄欠乏アルファルファ根から分泌が促進されるフラボノイド化合物のひとつ4',7-Dihydroxyflavanoneは低濃度(0.1mg/L)で根粒菌の生育を促進する。
- 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌資源利用研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:生産環境
- 専門:肥料
- 対象:牧草類
- 分類:研究
背景・ねらい
弱アルカリ性土壌に生育する作物は鉄をはじめとする微量要素の有効化に様々な戦略をもつ。アルファルファは鉄の有効化にアルファフランなどフェノール系の
化合物を分泌し、また鉄欠乏下で多数のフラボノイドを分泌する(Masaoka et al
1993)。フラボノイドは根粒菌の根粒形成や菌の生育に影響するものが知られているので、鉄欠乏下で分泌されるフラボノイドが根粒菌の生育に及ぼす影響
を明らかにする必要がある。
成果の内容・特徴
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石垣島の暗赤色土(pH7.0;H2O)に窒素を施用して栽培するとアルファルファは新葉が黄白色になり、根は先端部が黄褐色化し短根が増え、鉄欠乏の状態を示す。根粒の形成は認められず発芽苗の1/3は枯死する。窒素無施用では正常に生育し、根に根粒が形成される。
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水稲で鉄欠除栽培した根から分泌が促進された物質(混合物)を根粒菌の培地に添加すると、1と10mg/L濃度で菌数の増加が認められ、特に1mg/Lで
著しい。濃度が高まると100mg/Lでは無添加とほぼ等しくなり、200mg/Lでは逆に抑制するが、菌の生育は停止しない(表1)。
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分泌物(混合物)は0.1と1mg/Lの培地濃度で根粒菌の生育を促進する(図1)。
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分泌物(混合物)は多数の有機物で構成されHPLCで分離されるが、この精製物中に少なくとも2種類の根粒菌生育促進物質が存在する(図2のフラクション1と2)。
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2種類の生育促進物質の内のひとつ(フラクション1)は分子量256の4',7-Dihydroxyflavanoneである(図3)。
成果の活用面・留意点
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土壌ミネラルの有効化に関する植物と根粒菌の相互作用の解明に有益な情報である。
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土壌中の難溶性ミネラルの獲得に関する宿主と根粒菌との相互作用について検討が必要。
具体的データ

表1 根分泌物(混合物)による根粒菌の生育効果

図1 分泌物(混合物)の添加濃度による根粒菌の生育速度の変化

図2 精製した根分泌物のフラクション(1-4)と根粒菌濁度との関係

図3 4',7-Dihydroxyflavanone(図2のフラクション1)の構造
その他
- 研究課題名:根圏ミネラルを有効化する機能性物質の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成8年度(平成6~10年)