紫色のカンショジュース飲用ラットにおける四塩化炭素誘起肝障害の軽減
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要約
四塩化炭素(CCl4)で引き起こされるラットの肝障害に対する紫色のカンショジュースの軽減効果を調べた。CCl4投与前に紫色のカンショジュースを飲ませておくと、血清中のGOT、GPT値の上昇を抑えることができる。血清中のTBA反応物質、肝臓のTBA反応物質と酸化蛋白量も抑制できる。
- 担当:九州農業試験場・作物開発部・流通利用研究室、九州農業試験場・畑地利用部・甘しょ育種研究室、(委)(社)宮崎県JA食品開発研究所
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:食品、作物生産、流通加工、畑作
- 専門:加工利用
- 対象:いも類
- 分類:研究
背景・ねらい
九州農業試験場では、アントシアン系色素やβ-カロテンを含有する有色系カンショの育成及びそれらを利用した用途開発研究(カンショジュース、パウダー等)を行っている。本研究では、試作した紫カンショジュースがCCl4で引き起こされたラットの肝障害を軽減する効果の有無について調べる。
成果の内容・特徴
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アントシアン系色素を含む「アヤムラサキ」を原材料にして紫色のカンショジュース(カンショ果汁30%)を試作し、図1に示す実験スケジュールで、CCl4で引き起こされるラットの肝障害に対する軽減効果を調べた。ラットに飲用させた紫色のカンショジュースの量は50kg体重のヒト当たり400mlに相当し、日常生活で摂取可能な量である。
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ラットにCCl4を投与すると血清中のGOT、GPT値が上昇する(図2)。しかし、CCl4投与前日までの間、前もって紫色のカンショジュースを連続5日間飲ませておくと、それらの活性上昇を抑制することができる。同様な結果がLDHでも得られる。
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ラットにCCl4を投与すると、酸化的ストレスの指標である、血清中のチオバルビツール酸(TBA)反応物質、肝臓のTBA反応物質と酸化蛋白量が増加する。この増加も紫色のカンショジュースの前飲用により抑制することができる(図3)。
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以上の結果から、実験動物レベルでは、試作した紫色のカンショジュースは急性肝障害に対しての機能性を持つと判断される。
成果の活用面・留意点
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モデル動物での実験結果であり、ヒトに対する効果はまだ不明である。
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紫色のカンショジュースは、現在、(社)宮崎県JA食品開発研究所が中心となり、商品開発研究を実施しており、近々試験販売される。
具体的データ

図1 ラットへの紫色のカンショジュースとCCl4の投与法

図2 CCl4投与ラット血清のGOT、GPT、LDH活性に及ぼす紫色のカンショジュースの前飲用の効果

図3 CCl4投与ラット血清のTBA反応物質、肝臓のTBA反応物質、酸化蛋白量に及ぼす紫色のカンショジュースの前飲用の効果
その他
- 研究課題名:新規食品加工用素材利用のための高色素系甘しょが保有するラジカル消去能評価手法の開発、他2課題
- 予算区分 :総合的開発研究(高収益畑作)
- 研究期間 :平成8年度(平成7~9年)