カンショ塊根のアンギオテンシンI変換酵素阻害
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要約
カンショ塊根水抽出液はアンギオテンシンI変換酵素に対し阻害作用を示し、この阻害活性は塊根を蒸煮しても失われない。塊根のポリフェノール類であるクロロゲン酸及びアントシアニン色素にも阻害活性がある。
- 担当:九州農業試験場・畑地利用部・畑作物変換利用研究室、九州農業試験場・畑地利用部・甘しょ育種研究室
- 連絡先:0986-22-1506
- 部会名:食品、作物生産、流通加工、畑作
- 専門:加工利用
- 対象:いも類
- 分類:研究
背景・ねらい
農産物の輸入自由化に対抗して、南九州の基幹作物であるカンショの一層の需要促進を図るためにはカンショの高付加価値化が必要である。本研究では、カン
ショの機能性を明らかにする目的で、アンギオテンシンI変換酵素(angiotensinI converting
enzyme、以下ACEと略す)活性に対する影響を調べる。本酵素の阻害物質は血圧降下作用が期待できる。
成果の内容・特徴
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カンショ塊根の水抽出液はACEに対して阻害作用を示す。阻害活性は内部組織(外部組織を除去した部分)より外部組織(表面から約5mmの組織部分)(図1)で強い(表1)。塊根を蒸煮しても阻害活性は失われない(表1)。
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カンショ塊根ポリフェノール含量は内部組織よりも外部組織で高く、蒸煮処理しても変化しない(図2)。
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阻害活性とポリフェノール含量は負の相関を示し、ACE活性の阻害作用にポリフェノール類が関与していると判断される(図3)。
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カンショ塊根ポリフェノール類の一成分であるクロロゲン酸あるいはアヤムラサキのアントシアニン色素の成分であるYGM-3及びYGM-6(両色素はヤマガワムラサキから抽出、結晶化された。)も強いACE阻害作用を示す(表2)。
成果の活用面・留意点
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ポリフェノール類は外部組織にも多く含まれているので、塊根全体の利用が望ましい。加熱等の加工処理を加えてもACE阻害作用は期待できる。
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ポリフェノール類は褐変の原因物質であることを認識して利用すべきである。
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本成果については動物実験又は臨床試験ではまだ確認していない。
具体的データ
その他
- 研究課題名:甘しょ新機能性成分の検索と機能保持技術の開発
- 予算区分 :総合的開発研究(高収益畑作)
- 研究期間 :平成8年度(平成7~9年)