過酸化石灰被覆水稲種子の温度処理による土中出芽性の向上
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
水稲催芽種子に過酸化石灰を被覆して3日間摂氏20~25度の温度処理を行った後に土中播種すると、被覆当日播種あるいは摂氏10度処理後の播種に比較して出芽速度、出芽率が高まり、土中出芽性が向上する。
- 担当:九州農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
- 連絡先:0942-52-3101
- 部会名:総合農業(総合研究、作物生産)、総合研究、水田作
- 専門:栽培
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
水稲の代かき同時土中点播栽培は耐倒伏性強化に有効な安定的直播栽培法として評価されている。しかしながら、出芽・苗立ちに関しては打ち込み播種による播種深度の確保にともなう出芽の不安定化及び同一点播株内で播種深度が分散することによる出芽の不斉一化が危惧される。そこで、代かき同時土中点播栽培における出芽・苗立ちの安定化及び斉一化の一方策として過酸化石灰被覆水稲種子に対する播種前の温度処理が土中出芽性に及ぼす影響について検討する。
成果の内容・特徴
- 鳩胸催芽種子に乾燥種子重量の2倍量の過酸化石灰を被覆後、標準的な乾燥(被覆終了時から4%の重量減)を行った種子を密封して、摂氏10~30度の温度条件に3日間静置した種子を供試した。
- 摂氏20~25度の温度処理を行っても被覆種子に外観的な変化は生じないが、被覆当日に播種した場合(無処理)や摂氏10度処理後に播種した場合に比較して出芽が顕著に早まり、出芽率も高くなる(図1)。
- 品種が異なっても、摂氏20~25度の温度処理により同様の出芽性向上の効果が認められ、出芽性の指標となる出芽係数は各品種とも摂氏20~25度処理により顕著に高まる(表1)。
- ただし上記のような効果は過酸化石灰被覆後の乾燥程度の影響を受け、乾燥が不十分であると出芽性の低下を生じ、過乾燥である場合には効果の低減を生じる(図2)。
- 圃場で機械播種を行った場合でも土中出芽性の向上効果が見込まれる(表2)。
成果の活用面・留意点
- 水稲湛水直播栽培の出芽・苗立ち向上のための基礎的知見として活用。
- 処理期間を変えたときの温度条件については別途検討が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:代かき同時播種直播水稲の出芽・苗立ち向上技術の開発
- 予算区分:経常、研究強化費
- 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)