早期高糖性のサトウキビ新品種候補系統「KY87-110」

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要約

サトウキビ「KY87-110」は「NiF8」より1か月程度早く登熟する早期高糖性で、純糖率が高く、収穫後の品質劣化が低い。萌芽性に優れ、春植・株出栽培における可製糖量が多い。梢頭部が小さく、直立性であるため、機械収穫に適する。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・さとうきび育種研究室
  • 連絡先:09972-5-0100
  • 部会名:作物生産、畑作
  • 専門:育種
  • 対象:工芸作物類
  • 分類:普及

背景・ねらい

鹿児島県熊毛地域の基幹品種「NiF8」の普及面積は98%を越えるが、製糖開始期の12月上旬の糖蓄積は不十分であり、製糖歩留りや、品質取引下での原料生産の収益性向上の面で、なお、改善の必要がある。また、島中央部の低地一帯では霜害による品質低下が問題となっている。そこで、「NiF8」を上回る早期高糖性を備えた品種を開発し、製糖開始期の品質向上と霜害回避による生産の安定を図り、地域経済の活性化に寄与する。

成果の内容・特徴

  • 「KY87-110」は、沖縄県石垣島において、早熟性多収品種「NiF3」を母本として自然受粉した種子から、昭和62年(1987)に選抜を開始し、育成した系統である。
  • 早期高糖性で、12月上旬の可製糖率は「NiF8」、「NCo310」を大幅に上回り、かつ安定している。
  • 12月上旬には既に完熟し、還元糖分が低く、純糖率が高い。収穫後の品質劣化は「NiF8」並で、「NCo310」より明らかに低い。
  • 早熟性で、収穫後の萌芽性が良好であるため、株出における原料茎重は「NiF8」と同程度であり、可製糖量は「NiF8」より多い。
  • 風折抵抗性は「NCo310」、「NiF8」に比べて弱く、「中」である。
  • 脱葉性は「NCo310」並の「難」であり、人力収穫での省力性は低いが、梢頭部が小さく、直立性であるため、機械収穫に適する。機械収穫時の夾雑物混入率は「NiF8」並で少ない。

成果の活用面・留意点

  • 「NiF8」を大幅に上回る本系統の早期高糖性の活用により、製糖原料の品質向上、霜害回避による生産の安定が図られ、さらに、早期収穫による作付体系の多様化が期待される。
  • 風折抵抗性は強くないので、風折害の発生し易い地域での栽培は控える。

具体的データ

表1 サトウキビ新品種候補「KY87-110」の特性概要

その他

  • 研究課題名:高糖・高品質および易脱葉性さとうきび品種の育成
  • 予算区分:総合的開発研究(高収益畑作)、経常
  • 研究期間:平成9年度(昭和62~平成9年)