ギ酸を用いた紫カンショからのアントシアニン色素抽出法

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要約

ギ酸を抽出溶媒とした紫カンショからのアントシアニン色素抽出法は、従来の硫酸法に比べて抽出液の色価が高く、抽出残渣は家畜飼料として再利用できるので、色素生産コストが低減される。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・遺伝資源利用研究室
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:総合農業・作物生産、畑作
  • 専門:加工利用
  • 対象:いも類
  • 分類:普及

背景・ねらい

現在、紫カンショからのアントシアニン色素抽出には溶媒として硫酸が用いられ、抽出残渣は畑へ投棄されている。カンショの総合利用の1つとして、生いもから色素を抽出後、残渣を家畜飼料として再利用するシステムを想定し、サイレージの前処理に利用されるギ酸を用いて色素抽出を試みる。

成果の内容・特徴

  • 5%ギ酸を溶媒とした抽出液の色価は、0.5%硫酸より高い(図1)。
  • ギ酸を用いた抽出液の吸収スペクトルについて、最大吸収波長は硫酸よりやや長波長側である。(図2)。
  • 色素成分の比率についてはギ酸と硫酸でおおむね類似しており、色素利用に際して特に問題はない(表1)。
  • 残渣を牛に給餌した結果、嗜好性は良好である(写真1)。

成果の活用面・留意点

  • 色素製造工場で排出される残渣は家畜飼料として再利用できる。
  • 製粉工場で排出される生いもの端切れから色素を抽出することにより、低コストで色素生産が可能になり、廃棄物処理が大幅に削減される。
  • 抽出残渣は酸性であるため、飼料として長期間保存ができる。
  • 食用色素として利用する場合は、ギ酸を完全に取り除く必要がある。また、ギ酸は硫酸に比べてやや価格が高い。

具体的データ

図1 溶出溶媒の違いと抽出液の色価 図2 ギ酸及び硫酸で抽出した色素の吸収スペクトル

 

表1 ギ酸及び硫酸抽出液における色素成分比率(%)

 

写真1 抽出残渣の牛への給餌

 

その他

  • 研究課題名:暖地型栄養系遺伝資源の収集・保存と特性評価
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年~9年