カンショ塊根肥大期における地温とアントシアニン含量との関係

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要約

高アントシアンカンショ品種アヤムラサキは、塊根肥大期の平均地温が低下することでアントシアニン色素含量が増加するため、晩期収穫で高含量の色素を含むカンショが生産できる。また、地温によってアントシアニン色素組成も変化する。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・生産管理研究室
  • 連絡先:0986-22-1506 
  • 部会名:作物生産、畑作
  • 専門:栽培
  • 対象:いも類
  • 分類:指導

背景・ねらい

近年、加工原料用としての新たなニーズを開拓するために、高アントシアンカンショ品種、アヤムラサキが育成された。しかしながら、栽培条件とアヤムラサキのアントシアニン色素含量及び組成との関係についての知見は少ない。そこで、アヤムラサキのアントシアニン色素の含量及び組成と挿苗、収穫時期との関係について検討し、それに関与する栽培環境要因とアントシアニン含量の高いカンショの生産にとって好適な栽培条件を解明する。

成果の内容・特徴

  • アントシアニン色素含量の指標となる色価は、同一挿苗時期では在圃期間が長くなるほど、また同一在圃期間では収穫時期が遅くなるほど高くなる。挿苗、収穫時期では挿苗時期よりも収穫時期の影響が大きいので、晩期収穫によってアントシアニン含量の高いカンショが生産できる(図1)。
  • 色価と地温との関係についてみると、塊根の肥大が始まる挿苗後40日以降収穫までの平均地温(深さ20cmにて測定)と色価との間には、明確な負の相関関係が見られる(図2)。
  • 地温によりアントシアニン色素組成にも変化が見られ、高温ではYGM 5が5割以上を占めるが、温度の低下とともにその他の分画の占める割合が増加する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培期間の温度環境により、アントシアニン色素の含量、組成が変化するので、栽培地の温度環境を考慮してばらつきの少ない原料を揃えるなど加工利用する場合の有益な情報となりうる。
  • クロボク土壌での結果であり、土壌の種類が異なる場合は検討が必要である。

具体的データ

図1 挿苗収穫時期と色価との関係(1996年) 図2 塊根肥大期間の地温と色価との関係

 

図3 塊根肥大期間の地温とアントシアニン色素割合(1995~1997年)

 

その他

  • 研究課題名:甘しょの加工品質に及ぼす栽培条件の解明
  • 予算区分:大型別枠(新需要創出)
  • 研究期間:平成9年度(平成6~9年)