雌牛におけるインヒビンα鎖の能動免疫による複数排卵誘起

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要約

雌牛にリコンビナントのインヒビンα鎖を抗原として能動免疫することによってインヒビンに対する抗体価が上昇し、2回目の追加免疫後に複数排卵が誘起される。

  • 担当:九州農業試験場・畜産部・育種繁殖研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:畜産、畜産・草地
  • 専門:繁殖   
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

九州地域には全国の肉牛の約30%が飼養されており、優良子牛の低コスト生産技術の開発が急がれている。雌牛における排卵数の調節は胚移植及び双胎誘起に必須の技術であるが、現在行われている体外から異種動物のFSH(卵胞刺激ホルモン)製剤を投与する方法では、卵巣反応の個体差が大きく連用によって卵巣の反応性が低下してくることが知られている。そこでFSH分泌を特異的に抑制するインヒビンの能動免疫によって内因性FSH分泌を上昇させる新しい排卵誘起法の有効性を検討した。

成果の内容・特徴

免疫にはリコンビナントのインヒビンα鎖を抗原として125μgを1発情周期間隔で投与した。抗原投与は発情開始後9日目に4頭の雌牛の筋肉内に行った。発情誘起のために18日目にPGF2α(クロプロステノール0.5mg)を投与した。対照牛(4頭)にはアジュバントのみ投与した。

  • インヒビンに対する抗体の産生状況は、8倍に希釈した末梢血の125I標識インヒビンに対する結合能で示した。1回目の追加免疫後からインヒビン免疫牛群の抗体価は対照群と比較して有意に(P&st;0.05)上昇する(図1)。
  • インヒビン免疫牛群の排卵卵胞発育波の出現後のFSH濃度は対照牛群より高い傾向を示し、免疫牛群の中で複数排卵を示さなかった1頭を除くと更に高い傾向を示す(図2)。
  • 2回目の追加免疫後に複数排卵が誘起される(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本実験は双胎誘起を目的として行ったため、過排卵を誘起するためには投与量、投与方法を検討する必要がある。
  • FSH製剤に対して反応性が低下した牛にとっても過排卵を誘起する手法として活用できる可能性がある。

具体的データ

図1 インヒビンの能動免疫した時のインヒビンに対する抗体価の推移 図2 インヒビンの能動免疫後のFSH濃度の変化

 

表1 インヒビンの濃度宇免疫後の排卵成績

 

その他

  • 研究課題名:インヒビンの分泌調節による排卵数の制御
  • 予算区分:大型別枠(生物情報)
  • 研究期間:平成9年度(平成6-9年)