加工用有色カンショの高品質保持乾燥技術
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要約
有色カンショを角千切りにし、乾燥初期は80°C程度の送風温度で加熱通風乾燥し、段階的に送風温度を下げてゆき後期では60°Cで乾燥すると、品温上昇を防ぎ、有用成分であるアントシアンやβ-カロテンの分解を抑えながら乾燥できる。
- 担当:九州農業試験場・畑地利用部・作業システム研究室
- 連絡先:0986-22-1506
- 部会名:総合農業(作業技術)、農業機械・土木
- 専門:機械
- 対象:いも類
- 分類:普及
背景・ねらい
南九州のカンショ栽培は、デンプン原料用に置き換わる収益性の高い新用途開発が模索されている。アントシアンやβ-カロテンといった有用成分を多量に含む紫や橙色の肉色をもつ有色カンショの登場を機に、製パン、製麺等の食品加工用1次素材として従来のように蒸煮しないで、乾燥、製粉処理する高品質乾燥技術を開発する。これにより、カンショの用途拡大、作付けと工場雇用の確保並びに新食材を通じて消費者の健康増進をはかる。
成果の内容・特徴
- カンショは、加工用有色カンショのアヤムラサキ(アントシアン系、紫色)、九州114号(β-カロテン系、橙色)を使い、細切処理は角千切り(2.8~4.2mm角)とする。
- 乾燥方法は、高含水比の乾燥初期では効率良く乾燥するために80°C程度で乾燥し、含水比130%D.B.付近から段階的に降温操作を行い、乾燥後期となる含水比75%D.B.程度からは安全のために55~60°Cの比較的低い送風温度で乾燥し、含水比8~10%D.B.で終了する(図1)。降温操作によって乾燥後段の品温上昇を防ぐことができ、有用成分であるアントシアンやβ-カロテンの分解を最小限に抑えることができる。
- 送風温度60°Cではアントシアン分解量は30%程度で、55°C以下70°C以上では40%を越える。アントシアン分解を抑制する送風温度は60°Cが適当である(図2)。
- 送風量は、層内通過速度が1.5m/s程度とする。1.0m/s以下だと品質劣化を招く。
- 乾燥装置は、静置式より回転通気式がよい(図3)。材料が転動しドラム内を移動するので均一に乾燥でき、乾燥時間が短縮され均質で良好な製品に仕上がる。ドラム内の材料充填率は25%である。
成果の活用面・留意点
- 良質な食品加工用原料としての活用が期待される。
- 原料いもは病変等のない新鮮物を用い、十分洗浄した後トリミングする。皮剥きの有無は問わない。
- 乾燥物は速やかに製粉処理し、密閉等の適切な処置を行い15°C以下で保存する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:甘しょの加工条件及び加工適性の解明
- 予算区分:大型別枠(新需要創出)
- 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)