GIS(地理情報システム)を用いた多目的水利用の実態解明支援システム

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要約

生活・親水・防火など多用途に用いられる農業用水の多目的水利用の実態解明には、GISが有効である。水文、水質、施設配置、及び、アンケート調査結果を含めて、データの一元的管理ができ、立地条件に即した多目的水利用の地理的解析が可能となった。

  • 担当:九州農業試験場生産環境部資源評価研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:農業機械・土木
  • 専門:農村整備
  • 対象:農業工学
  • 分類:研究、行政

背景・ねらい

農業用水は、本来の目的であるかんがいへの利用の他に、生活・親水・流雪・防火・養魚など多目的の用途に利用されている。生活に根ざした農業用水の多目的水利用の定量的評価には、用水路の形態や水量、水質とともに立地条件など、種々の特性を総合的に検討する必要がある。そこで、立地配置、水理諸元、水利・水文、及び、地域住民を対象とした利用実態アンケート調査結果等の情報を一元的に管理し、解析するシステムをGIS上に構築し、事例地区において「洗い場」等の利用実態の把握に適用を試みた。

成果の内容・特徴

  • 多目的水利用の実態解明に必要な調査項目、調査上の留意点、及びGISへの適切な入力形態について明らかにし、ベクトル型GISを用いた実態解明支援システムを構築した。
  • 必要な調査項目は、多目的水利用施設の立地配置、施設形態(写真情報を含む)、地形・土地利用、水文・水質、水路形態、アンケート調査結果等(図1)である。調査データを、地図情報を媒介として一元管理することにより、要因相互間の関係把握について、地理的要因も考慮に入れた解析を行うことが可能である。
  • スキャナ入力した地図(縮尺1/2500)を原図とし、水路を線要素、土地利用を面要素として登録した。水路形態や水質値、アンケート集計値等は各要素の属性値として検索できるようにデータベースに入力した。
  • 住民を対象とした利用実態アンケート調査の集計を小単位(8~17戸を1集落単位とした)で行うことにより、利用者の住居や水路の立地条件に大きく左右される利用実態を適切に把握することが可能となった。
  • 調査地区において、「洗い場」は、特定の水路に沿って配置され、「庭への引水」の利用分布は、特定の旧集落に限定されていることが判明した(図2)。
  • 洗い場を利用している世帯割合は、集落の新旧、居住年数、水路への隣接状況等の立地条件に大きく依存することがわかった(図2)。調査地区全体の平均利用率は15%であったが、集落単位でみると、利用世帯割合が50%以上の集落が、全55集落のうち6集落あった。以上のことから、洗い場利用が古い集落を中心とした地域生活に深く根ざしていることが判明した。

成果の活用面・留意点

原図に用いる地図は、多目的水利用の用途や地域特性にも依存するが、縮尺1/5000~1/10000程度でも利用可能である。

具体的データ

図1 GISによる多目的水利用の実態解明支援システムと調査項目

 

図2 農業用水の多目的水利用の分布と「洗い場」の利用状況

 

その他

  • 研究課題名:生活・親水系の多目的機能の解明とその保全のために必要な用水量及び施設形態の計画手法の開発
  • 予算区分:特別研究(多目的水利用)
  • 研究期間:平成9年度(平成9~12年)