発光遺伝子を導入したイネもみ枯細菌病菌のイネ体上部への移動様式ともみ感染

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要約

発光遺伝子が発現するイネもみ枯細菌病菌を得て、本病原菌はイネの株元から、イネの伸長に伴う持ち上がりと毛管現象によって上位に移動し、葯および枯死部 で急増し、後に穎に定着すること、葯ではごく微量の細菌量でも感染が成立すること、多種類の植物の残渣および葯で増殖が可能であることを明らかにした。

  • 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・病害生態制御研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:総合農業(生産環境)、病害虫
  • 専門:作物病害
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

イネもみ枯細菌病の発生は年次間変動が大きく、予防対策を行って突発を防ぐことは実際上困難であった。本病原菌は苗で本田に持ち込まれるが、その後もみ感染に至るまでの移動様式、増殖部位、病徴発現、潜伏場所などについては不明であった。近年開発された発光遺伝子利用による追跡法と2次元ルミノメータを用いて、その生態を明らかにし、環境に配慮した防除法確立のための基礎資料を得る。

成果の内容・特徴

  • イネもみ枯細菌病菌に発光遺伝子を導入し、それが安定に維持され発現する組換え体を得た。組換え体は、PPGA培地上で摂氏20~23度のときに強く発光する。液体培養すると、対数増殖期半ばから定常期初め頃にかけて強く発光する。多くの炭素源(少なくとも25種類)を利用して発光する。
  • 本病原菌はイネ株元から、イネの伸長に伴う持ち上がりと毛管現象によって上位に移動する。また、ダニへの付着による伝播も認められた。本病原菌は未開花の穎内へも侵入可能である。
  • 本病原菌は、特に葯および枯死部で急速に増殖し、後に穎で増殖し定着する。葯では1cfu(ColonyFormingUnit)というごく微量の細菌で感染が成立し、3~4日後に穎に病徴が現れる。これは多量接種の場合と比べて1~2日間の遅れにすぎない。
  • 本病原菌はイネ以外にも、マツの芽、大豆種子など多種類の植物残渣および葯でも増殖と生存が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本病防除の基礎的知見として活用が期待できる。
  • 本実験は閉鎖系内で行ったものである。

具体的データ

図1 イネの葯で増殖しているもみ枯細菌病菌

 

図2 ダニによるもみ枯細菌病菌の伝播軌跡(矢印)

その他

  • 研究課題名:イネ病原細菌の増殖と発病機構
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成7~9年)