抵抗性作物を加害できるバイオタイプ発達のシミュレーションモデルによる予測
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要約
抵抗性作物を加害するバイオタイプは、移動能力が低く、移動分散前に交尾し、要防除密度が低い害虫で早く発達する。抵抗性作物の栽培規模の拡大と作付率の上昇はバイオタイプ発達を早める。
- 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:総合農業(生産環境)・病害虫
- 専門:作物虫害
- 対象:昆虫類
- 分類:研究
背景・ねらい
害虫抵抗性作物の活用は、省力的で環境への負荷の少ない害虫管理のために今後一層重要になると見込まれ、近年は遺伝子組換え技術を使った抵抗性作物の育成が盛んである。しかし、害虫個体群にはつねに抵抗性作物を加害するバイオタイプが発達する可能性がある。そこで、抵抗性品種を効果的かつ持続的に利用する方策を検討するために、害虫の生物学的特性と人為的要因がバイオタイプの発達速度に与える影響を、新たに開発するシミュレーションモデルによって評価する。
成果の内容・特徴
- 抵抗性品種を植えた圃場ではそれを加害できるバイオタイプだけが繁殖できると仮定し、成虫の圃場選択能力と交尾時期の影響を組み入れたモデル(図1)を開発し、以下の予測結果を得た。
- 抵抗性作物加害性のバイオタイプは、羽化した生息地から移動する前に交尾する害虫では移動後に交尾する害虫よりも早く発達する。また、バイオタイプは、地域の抵抗性作物の作付割合が高いほど、また同一品種の作付規模が拡大はするほど、早く発達する(資料省略)。
- 1回の分散で圃場から移出する割合が高く、繰り返し分散して生息地を選択できる移動性の高い害虫では、バイオタイプの発達は遅くなる(図2)。
- 要防除密度にもとづく殺虫剤の散布は、散布しない場合にくらべてバイオタイプの発達を一般に早める。この傾向は、要防除水準が低いほど顕著になる(資料省略)。
成果の活用面・留意点
- 定着性が強く、病気の媒介昆虫のように要防除密度が低い害虫ではバイオタイプが早く発達する可能性があるので注意する。
- シミュレーションモデルは、抵抗性品種加害性が主導遺伝子によって支配されていることを前提にして構築している。この前提が該当しない場合については別途モデルを開発する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:イネウンカ類の遺伝的変化の予測と管理に関する研究
- 予算区分:科・重点基礎
- 研究期間:平成9年度(平成9年)