ミナミネグサレセンチュウのカンショ非親和系統の識別

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要約

ミナミネグサレセンチュウ系統間のカンショ親和性の差異とrDNAのPCR-RFLPパターンの差異は符合する。 PCR-RFLPに基づく3類型間には不完全な生殖的隔離があり、半種レベル以上の相違を示す。カンショ親和性は1類型だけに発達している。

  • 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・線虫制御研究室・病害遺伝子制御研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:総合農業(生産環境)、病害虫
  • 専門:作物虫害
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ミナミネグサレセンチュウは、一般にサトイモ、バレイショ、コンニャク等を加害するものの、南九州では特異的にカンショの主要有害線虫となっている。親和性差異の実態及び原因は不明である。そこで、1)諸系統のカンショ親和性の量的評価、2)諸系統のrDNAのPCR-RFLP解析、3)rDNAのPCR-RFLPで認められる類型の生殖的隔離の検証交配試験を実施し、親和性差異の実態を明らかにすると共に親和系統の簡易識別法を開発して、地域における効果的な線虫害回避作付体系の策定及びカンショの線虫抵抗性育種に資する。

成果の内容・特徴

  • 供試線虫系統(2.5頭/土壌1g)をポットに一節挿ししたカンショに接種し、約摂氏27度で55日間栽培すると、ベルマン法で回収された頭数と接種した頭数の比(Pf/Pi値)が1以上を示す系統(カンショ親和系統)と1未満の系統(カンショ非親和系統)に分かれる(図1)。これらの諸系統のリボゾームDNAをPCR-RFLP法で解析すると、3類型が認められ(図2:A、B及びC)、カンショ親和系統はすべて類型Aに対応するが、カンショ非親和系統は概ね類型BとCに対応している。従って、カンショ親和性はPCR-RFLPの類型Aにのみ発達している。カンショ非親和性系統(類型B及びC)は容易に判定できる。
  • PCR-RFLPの3類型のいずれの組み合わせからもF1が生じる。同類型に属する異系統間交配(A×A)では、そのF1自殖により全反復で数十頭のF2が得られるが、異類型の系統間交配のF1自殖では、反復の一部で数頭のF2が生じるにすぎない(図3、図4)。従って、3類型は半種レベルの分化段階に達している。

成果の活用面・留意点

  • 南九州ではカンショ親和系統と非親和系統が混在している。線虫の寄主親和特性の迅速な検出により、地域における効果的な線虫害回避作付体系の策定等が可能になる。
  • 標的系統が特定され、カンショの線虫抵抗性育種に活用される。
  • PCR-RFLPの類型Aにはカンショに親和性が乏しい系統も含まれるので注意する。

具体的データ

図1 カンショ(コガネセンガン)におけるミナミネグサレセンチュウ19系統(A、B、C)及びキタネグサレセンチュウ(Pp:対照)の増殖比(Pf/Pi)。

 

図2 ミナミネグサレセンチュウrDNA(ITS領域)制限酵素切断パターン(PCR-RFLP)の系統間比較。

 

図3 系統間のF1の自殖成功率(%)(n=5-10)。 図4 F1の自殖により得られたF2幼虫数。(n=1-6)

 

その他

  • 研究課題名:ミナミネグサレセンチュウの病原レースの遺伝的特性の解明に関する研究
  • 予算区分:経常・重点基礎
  • 研究期間:平成9年度(平成6~11年)