ふん尿投入量の短期制限施用による飼料畑土壌と作物中の養分バランスの改善

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要約

家畜ふん尿の長期大量施用により,交換性カリウム(K)が60mg/100g(乾土)以上になった飼料畑には,トウモロコシが1作に吸収する窒素(N)と Kの約1/2の各々122と128kg/ha相当のふん尿量に制限施用すれば2~3年で交換性Kを27mg以下に,トウモロコシ茎中の硝酸態窒素を 0.3%以下に低下させる事が出来る。

  • 担当:九州農業試験場・生産環境部・上席研究官,土壌資源利用研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:生産環境
  • 専門:肥料
  • 対象:牧草類
  • 分類:指導

背景・ねらい

飼料作物生産圃場へ適正規模を上回る家畜ふん尿施用は農業環境の富栄養化を引き起こしている。この対策として,飼料畑への投入量の削減を試みることで,土壌とトウモロコシなどの飼料作物の養分バランスに及ぼす修復効果とそれに必要な期間について熊本県泗水町の農家の飼料畑で明らかにする。農家の飼料畑へのふん尿由来のNとKの平均施用量は作物の年間吸収可能量の2-3倍と推定される。

成果の内容・特徴

  • 飼料畑へのふん尿由来NとKの施用量をトウモロコシが1作に吸収する総量の1/2近くに低下させると(表1),ふん尿施用量の減少により1期作目のトウモロコシ跡地土壌中の交換性K濃度(乾土100g当り)が1~2年で60mgから27mg以下に低下し,診断基準値(11.7~39.1)の範囲に到達できる(図1)。
  • トウモロコシの茎中硝酸態窒素は施用量を低下させると1年で効果が現れ,0.7%以上のものが0.3%台に低下する。しかし逆にふん尿施用量が増えるとその年は容易に濃度が高まり変動しやすい(図2)。
  • ふん尿施用量を低下させた畑地では多施用継続に比べてトウモロコシ生育収量が低下する(16%)傾向がある。ただし,作物中のNやK濃度の低下,土壌中の交換性Kの低下とMg,Caの増加が認められ,養分バランスが改善する。(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 厚層腐植質黒ボク土の養分過剰圃場に適用できる。
  • 尿はオガクズ等を混合してたい肥化,流通させ畑地への施用量を制限する。また圃場へのふん尿施用量を制限すると土壌の養分バランスが短期間(2~3年)で変動するので数年毎に土壌診断を行い,作物成分,特に窒素不足に対処する。

具体的データ

表1 ふん尿施用量を減少させた圃場の窒素(N)とカリウム(K)の収支(kg/ha)

 

図1 トウモロコシ跡地土壌の交換性カリウムmg/100g 図2 トウモロコシ茎中の硝酸態窒素濃度に及ぼす少肥の効果(94年秋から減少)

 

 

図3 ふん尿施用量を減じて3年度のトウモロコシ生育量とその無機成分並びに土壌の無機成分(18圃場、6農家の平均)

 

その他

  • 研究課題名:ふん尿の合理的施用法の解明
  • 予算区分:地域営農合理化(地域総合研究)
  • 研究期間:平成9年度(平成5年~9年)