超精密型溶存酸素計を用いた水稲根の簡易・迅速呼吸速度測定法

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要約

水質分析用の超精密型溶存酸素計を水稲根の呼吸速度測定に利用すると、操作が簡便であり、約30分で測定出来る等の利点が多く、従来の検圧法等に比べ根の呼吸速度の簡易・迅速測定法として有効である。

  • 担当:九州農業試験場・水田利用部・水田土壌管理研究室
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:総合農業(生産環境)、生産環境
  • 専門:肥料
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

暖地水田では土壌に鋤込まれた有機物が高温条件下で微生物による急激な分解を受けるため、土壌中に有害成分が高濃度に生成し水稲根に障害を与え、収量・品質を低下させやすい。従って、暖地水稲作では根系機能の維持・向上のための土壌管理技術を開発することは極めて意義が大きく、そのためには根の活力評価法の確立が重要である。しかし、従来の根活力評価法の一つである検圧法等では、測定操作が煩雑であったり、測定に長時間を要する等の欠点があるので、簡易・迅速に根活力を測定・診断する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 水稲根の酸素吸収速度(呼吸速度)を超精密型溶存酸素計で測定すると、従来の検容法による酸素吸収測定器と比べ操作が簡便であり、20~30分で測定可能である等の利点が多く、根の呼吸速度の簡易・迅速測定に有効である(図1)。
  • 水稲根を約3cmの長さに切断して均一に混合した中から新鮮重で5gまたは10gを秤取し、測定に供する。測定手順は、測定ビン中に切断根を挿入し、水を満たし、酸素電極を差し入れ静置する。水中酸素濃度の減少が直線となった時点(セット2~3分後)を測定開始時の酸素濃度とし、一定時間後(通常は20~30分後)の酸素濃度を読みとり、計算式から酸素吸収速度を算出する(図2、表1)。
  • 水稲の幼穂形成期(8月上旬)から穂揃期(9月上旬)にかけて乾田直播、不耕起移植及び無代かき移植などの透水性の高い土壌条件で栽培された根の酸素吸収速度は、湛水直播や代かき移植などの透水性の小さい場合に比べ大きい傾向が認められ、根の呼吸酵素系の活性が高まっていると判断される(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 水稲以外の作物根の呼吸速度(酸素吸収速度)の簡易・迅速測定にも活用できる。
  • 酸素吸収速度と重窒素トレーサー法で測定した窒素吸収速度との間には栽培法や生育時期で一定傾向が見られない場合があり、両者の関係を解析するには測定条件を考慮する必要がある。

具体的データ

図1 超精密溶存酸素計(DOメーター)を用いた根の酸素吸収速度測定 図2 水中溶存酸素濃度の経時変化

 

表1 測定条件及び酸素吸収速度算出方法

 

表2 水稲根の酸素吸収速度測定事例

 

その他

  • 研究課題名:異なる土壌条件における直播・移植水稲根系の機能評価と機能向上技術の確立
  • 予算区分:総合的開発研究(次世代稲作)
  • 研究期間:平成9年度(平成7~9年)