アルミニウム耐性ダイズ根粒菌のリン代謝とアルミニウム吸収
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要約
アルミニウム耐性のダイズ根粒菌はアルミニウムストレス下で細胞内蓄積リンの加水分解を促進し、細胞外へのリンの排出を高める。この細胞内における正リン酸量の増加と細胞外への排出がアルミニウム吸収の低いことと関係している。
- 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌微生物研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:総合農業(生産環境)、農業環境(農業生態)、生産環境
- 専門:土壌
- 対象:豆類
- 分類:研究
背景・ねらい
根粒菌のアルミニウム耐性機構を解明することは作物栽培上問題となる土壌の一つである酸性土壌で利用可能な窒素固定能の高い菌株の作出に道を開くものとの期待が大きい。ダイズ根粒菌のアルミニウム耐性は菌株によって大きな差があり、耐性菌株と感受性菌株がすでに特定されている。しかし、両者の耐性の差が何に起因するのかまだ明確になっていない。そこで耐性菌株と感受性菌株のリン代謝の違いを明確にして、アルミニウム耐性機構解明の基礎とする。
成果の内容・特徴
- 寒天培地(pH4.6,5μMP,50μMAl)で予備選抜したアルミニウム耐性菌株はアルミニウムストレス液体培地(Al:pH4.6,5μMP,50μMAl)で増殖できるが、感受性菌株は増殖できない(図1)。これらの培地はKeyser&Munns(1979)に準ずる。
- アルミニウム含有緩衝液(pH5.4)で48時間処理した時の耐性菌株のアルミニウム含量は感受性菌株のそれより少ない(図2)。
- アルミニウムを含まない培地で培養すると、耐性菌株は培地中リン濃度の多少(28.7mMP(HP)と5μMP)に関わらず、感受性菌株の約2倍量のリンを細胞内に吸収する(表1)。
- 細胞内蓄積リン量の異なる耐性または感受性菌株に低リンストレス(LP:pH5.4,5μMP)やアルミニウムストレス(Al:pH5.4,5μMP,50μMAl)をかけると、細胞内リンの加水分解が促進されて細胞内で蓄積リン量が減少し、同じく細胞内で正リン酸が増加する。この増加の程度は耐性菌株の方が感受性菌株より大きく、また、アルミニウムストレスをかけた場合の方が大きい(表1、図3)。耐性菌株では細胞外に排出されるリン量が感受性菌株より多い(表1)。
- 以上より、耐性菌株ではアルミニウムストレス下で細胞内の蓄積リンの加水分解が促進されて細胞内の正リン酸が増加し、また細胞から排出されるリンも多く、このことが耐性菌株のアルミニウム吸収が低いことと関係していると推察される。
成果の活用面・留意点
- 細胞内蓄積リンの代謝とアルミニウム吸収の関係はダイズ根粒菌以外の根粒菌や他の細菌のアルミニウム耐性機構解明のための基礎的知見となる。
- ここで用いた根粒菌は寒天培地(pH4.6,5μMP,50μMAl)上の増殖の有無によって耐性または感受性と判定した菌株である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:1)根粒菌のアルミニウムストレス耐性機構の解明、2)土壌および作物根圏における根粒菌の生態の解明
- 予算区分:1)原子力(アルミストレス)、2)経常
- 研究期間:平成9年度(1)平8~10年、2)平6~10年)