畑土壌におけるセラチア等グラム陰性細菌によるプロテアーゼ生産
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要約
家畜スラリーを投与した飼料作畑土壌では土壌プロテアーゼ活性が高い。この土壌プロテアーゼは金属プロテアーゼであり、Serratia marcescens等のグラム陰性細菌が本酵素の主要な供給源である。
- 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌微生物研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:総合農業(生産環境)、農業環境(農業生態)、生産環境
- 専門:土壌
- 分類:研究
背景・ねらい
家畜スラリーを過剰に投与した畑では、窒素溶脱等の環境問題を引き起こしており、有機態窒素代謝の制御が望まれる。家畜スラリーを多量投与し硝酸態窒素の溶脱が著しい飼料作畑におけるプロテアーゼ生産菌を特定するとともに、特定した細菌のプロテアーゼをコードする遺伝子の選択的なDNAプライマーを用いて、土壌から直接この遺伝子の検出と、菌数の推定を行う。
成果の内容・特徴
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スラリー投与畑土壌の土壌プロテアーゼ活性は、水田や他の畑土壌と比べて著しく高いが、プロテアーゼ生産菌数に大きな差はない(図1)。
- スラリー投与畑以外の土壌ではプロテアーゼ生産菌の殆どがグラム陽性のBacillus属細菌であるが、スラリー投与畑土壌(12t /10a投与区、60t/10a投与区)では、グラム陰性細菌の割合が高い(図2)。
- スラリー投与畑土壌のプロテアアーゼは、阻害剤に対する反応から、金属プロテアーゼであった(表1)。また分離したSerratia marcescens(s131、s132)やグラム陰性細菌(m110)も菌体外に金属プロテアーゼを生産した(表1)。
- S.marcescens (s131, s132)及びグラム陰性細菌(m110)の金属プロテアーゼ遺伝子を選択的に増幅するDNAプライマー(SR5、SR10)を用いると、スラリー投与畑土壌から直接抽出した全DNA画分の中から本遺伝子を検出することができ(図3)、反応による検量線から推定した細菌数はスラリー非投与畑土壌では4.2x104 乾土以上、スラリー投与畑土壌では15.0x104 (12t)、60.0x104/g 乾土(60t)以上と推定された。
成果の活用面・留意点
- 家畜スラリーを過剰に投与した土壌での窒素溶脱の制御技術の開発に寄与する。
- PCR法により検量線から算出した菌数は、DNAの抽出効率を省いており相対値である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:バイオマス窒素の代謝関連微生物活性の動態
- 予算区分:一般物枠(物質循環)
- 研究期間:平成9年度(平成4~10年)