家畜スラリー多量投与畑土壌の脱窒菌の検出用DNAプライマーの作成
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
脱窒菌のN2O還元酵素遺伝子に基づいて作成したDNAプライマーは家畜スラリーを多量に継続投与した飼料作畑から分離した脱窒菌の本酵素遺伝子を選択的に増幅でき、本DNAプライマーを用いたPCR反応によってこの遺伝子が土壌から直接検出できる。
- 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌微生物研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:総合農業(生産環境)、農業環境(農業生態)、生産環境
- 専門:土壌
- 分類:研究
背景・ねらい
南九州では家畜スラリーの多量投与による、環境汚染の懸念が指摘されている。これを解決する手法の一つとして、脱窒菌による脱窒の有効利用が考えられる。有効利用を図るためにはその生態の解明が必要であるが、脱窒の最終過程であるN2OをN2に還元する脱窒菌の検出手法は開発されていない。そこで、N2O還元酵素をコードする遺伝子を選択的に検出するDNAプライマーとプローブを作成し、PCR反応による脱窒菌の簡易な検出手法を開発する。
成果の内容・特徴
-
既知の脱窒菌であるPseudomonas aeruginosa, P.stutzeri, Paracoccus denitrificansのN2O還元酵素遺伝子の共通塩基配列からデザインしたDNAプライマー(447f/1378r)(図1)はこの遺伝子を選択的に増幅する(表1)。
-
家畜スラリーを12t/10a、60t/10a投与した飼料作畑の表層土壌から分離した脱窒菌はすべてグラム陰性の桿菌で、複数の種にまたがり、Burkholderia pickettiiとPseudomonas sp.かAlcaligenes sp.であった(表1)。
- 作成したDNAプライマーは、単離したすべての脱窒菌からN2O還元酵素遺伝子を増幅した(表1)。
- 土壌から抽出/精製した全土壌微生物由来のDNA画分から、DNAプライマーを用いたPCR反応生成物とP.aeruginosaのN2O還元酵素遺伝子から作成したDNAプローブ(図1)とのサザンハイブリダイゼーションにより直接この遺伝子が検出できた(図2)
成果の活用面・留意点
-
このDNAプライマーはPseudomonas aeruginosa,P.stutzeri,Burkholderia pickettii等の構造が異なる複数のN2O還元酵素遺伝子を増幅できる。
- 土壌から抽出したDNAを鋳型として用いたPCR反応では、腐植物質の影響で増幅されない場合があるので、対照となる反応を行い影響がないことを確認する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:1)窒素溶脱に係わる土壌微生物の特性解明、2)過剰窒素畑土壌の脱窒菌の分離及び同定
- 予算区分:1)地域営農合理化(地域総合)・2)重点基礎
- 研究期間:平成9年度(1)平成8年~10年、2)平8年)