棒状薄層クロマトグラフ/FIDによる玄米の遊離脂肪酸含量の簡易測定法

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要約

FID(水素炎イオン化検出器)付き棒状薄層クロマトグラフを用いると、貯蔵米における脂質の分解をクロマトグラムの変化として見ることができ、玄米の遊離脂肪酸含量が簡易迅速に測定できる。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・流通利用研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:食品、作物生産、流通加工、水田作
  • 専門:食品品質
  • 対象:水稲
  • 分類:研究

背景・ねらい

米の貯蔵においては主要成分のうちで脂質の分解が速やかに進行するので、遊離脂肪酸の増加は貯蔵米の品質劣化指標としてよく利用されている。しかし、一般的な評価手法であるアルカリによる滴定法は、肉眼判定のため滴定終点が明確でない、煩雑な操作を要する、多量(数g~10g程度)の試料を要するなどの問題がある。このため、FID(水素炎イオン化検出器)付き棒状薄層クロマトグラフを活用して少量の試料で簡易迅速に測定できる手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 棒状薄層クロマトで展開し、スポットをFIDの水素炎で直接燃焼して検出する自動分析装置(図1)を利用すると、玄米の遊離脂肪酸含量が迅速簡便に測定できる。
  • 分析試料は図2に示す操作手順に従い調製する。0.5g程度の試料で遊離脂肪酸のピークをとらえることができる。
  • 本法を用いると玄米粉(ヒノヒカリ)貯蔵中におけるトリグリセリドの減少と遊離脂肪酸の増加をクロマトグラムの変化として観察できる(図3)。リノール酸による検量線から遊離脂肪酸含量を求めると、摂氏20~25度で相対湿度50~60%の室温条件よりも摂氏40度で相対湿度75%の加速条件における玄米粉の方が遊離脂肪酸の上昇が早い(図4)。貯蔵米の遊離脂肪酸の上昇は粉貯蔵に比べ緩やかであるが、本法の精度で測定可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本法では個々の脂肪酸種までは分離分析できないが、貯蔵中における遊離脂肪酸総量の変動を調べることができる。
  • 粉砕が不十分であると誤差が大きくなる。測定精度を高めるためにはできるだけ均一に粉砕するか(今回の試験では試験用ブレンダーで1分間粉砕)、ヘキサン抽出に使用する試料量や測定の反復回数を増やす。
  • リノール酸(8.832μg)をスポットしたときの再現性は±4.8%(ピーク面積の標準誤差、n=8)である。微少な変化を測定するときは注意を要する。

具体的データ

図1 測定に用いた棒状薄層クロマトグラフ/FID 図2 棒状薄層クロマトグラフ/FIDによる玄米の遊離脂肪酸分析の操作手順

 

図3 玄米粉貯蔵中におけるトリグリセリドと遊離脂肪酸の変化 図4 玄米粉貯蔵中における遊離脂肪酸含量の変動(ヒノヒカリ、n=3)

 

その他

  • 研究課題名:化学発光分析、ESR等による貯蔵米の品質劣化判定技術の開発
  • 予算区分:総合的開発研究(次世代稲作)
  • 研究期間:平成9年度(平成7~9年)