近赤外分光分析法による食用油脂の品質劣化の検出法
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要約
食用油脂を、試料層の深さが1mmで温度調節可能なシラップカップに入れ、無反射ガラスをかぶせて近赤外スペクトルを測定すると、得られる近赤外スペクトルから食用油脂の品質劣化が簡易・迅速かつ非破壊的に測定できる。
- 担当:九州農業試験場・作物開発部・上席研究官
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:食品、流通加工
- 専門:食品品質
- 対象:豆類・工芸作物類
- 分類:研究
背景・ねらい
食用油脂の劣化は、その脂肪酸組成と並んで品質に関わる重要な要素である。近赤外分光分析法で油脂の脂肪酸組成を識別できることが明らかになってきているが、この手法が油脂の劣化の判定にも利用できることになれば、さらに利便性が高まることになる。そこで、油脂の劣化に伴う近赤外スペクトルの変化を確認することによって品質劣化の指標を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 食用油脂を、新たに開発した、試料層の深さが1mmで温度調整可能なシラップカップ(図1)に入れ、無反射ガラスをかぶせ、近赤外スペクトルを摂氏35.0~35.5度で測定する。
- 食用油脂を加熱処理・紫外線照射処理すると、時間経過と共に過酸化物価が上昇する。これに伴い、2080nm付近および1460-1480nm付近の吸収において、近赤外原スペクトルでは上向きに、近赤外2次微分スペクトルでは下向きに強くなる(図2、図3)。過酸化脂質の水酸基に特徴的な2080,1460nmの吸収帯と対応している。試料層を通常よりも厚くして光路長を長くし、かつ温度をコントロールするので、吸収のレベルが揃い吸収帯の特徴がより明確になり、原スペクトルでも判別可能となる。
- コーン油・紅花油・オリーブ油・大豆油・鰯油・ゴマ油・落花生油・綿実油・ナタネ油の食用油脂9種を、摂氏120度加熱した試料では過酸化物価と2080nmにおける近赤外2次微分スペクトル値との間に相関が認められる(図4)。
成果の活用面・留意点
- 図4から過酸化物価が推定されるが、測定精度をあげるためには、油脂の種類ごとに検量線を作成する。
- 近赤外分光法で日常的に用いる重回帰分析ではなく、スペクトルのパターンで解析するので、各種の油脂や他の機種の近赤外分析機で測定したデータにも適用可能である。
- 玄米の糠などの劣化に見られるように、リパーゼの作用で脂肪のトリグリセリドが分解して、遊離脂肪酸を生じる場合、同様の波長領域で変化が起きるので、注意を要する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:非破壊計測法による農産物・食品の品質評価/米の品質劣化の非破壊迅速評価技術の開発
- 予算区分:経常/総合的開発研究(次世代稲作)
- 研究期間:平成9年度(平成7~10年)/(平成7~9年)