代かき同時土中点播直播による水稲品種「ヒノヒカリ」の安定栽培技術

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要約

水稲品種「ヒノヒカリ」の代かき同時土中点播直播栽培において、播種量10a当たり乾籾で約3kg、条間30cm、株間20cmとし、過酸化石灰被覆籾を代かきと同時に点状に打込み、約1週間落水管理を行うと苗立ち率や初期生育が向上し、安定生産が可能となる。収量は移植栽培の場合とほぼ同等となる。

  • 担当:九州農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム及び地域総合(直播稲作型)関係研究室[連絡先] 0942-52-3101
  • 部会名:総合農業(総合研究、作物生産)、総合研究、水田作
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:普及

背景・ねらい

日本の稲作では農業従事者の高齢化による労働力不足が顕在化しており、また一層の低コスト・省力化が求められる中で、それに対応できる技術確立が急務となっている。そこで省力栽培が可能な代かき同時土中点播機を開発し、九州地域で最も作付け面積の大きい良食味品種「ヒノヒカリ」を対象に、代かき同時土中 点播直播による最適播種量、播種様式、水管理及び施肥法等の栽培技術を検討し、暖地に適応する省力・安定直播栽培技術を確立する。

成果の内容・特徴

  • 除草剤散布までの作業手順は次のとおりである。耕うん→施肥・耕うん→入水→荒代かき1~2回(播種当日)・整地代かき同時打込み播種→播種直後から落水管理(約1週間)→入水→除草剤散布。播種作業は降雨や風の影響を受けにくいので計画的に行える。
  • 過酸化石灰(酸素発生剤)を乾籾重の2倍量被覆した籾を適切な硬さの代かき土壌(ヨーグルト状、軽量型コーン貫入深で約50mm)に12m/sの速さで打込み播種すると、出芽時の種籾の深さが平均約10mmとなり、倒伏しにくくなる。播種後は自然落水とし、その後出芽ぞろい期(約1週間)まで落水管理を行い、苗立率の向上と初期生育の促進を図る(表1)。
  • 播種量を乾籾重で10a当たり約3kg(苗立ち数70~80本/平方メートル)、条間30cm、株間20cmとする播種条件が安定栽培に適する( 表2)。播種作業では、開発したセンターマーカーを使用すると( 写真1)、オペレータの作業負担が節減され、また作業行程間が一定(約40cm)となる(写真2)等、作業精度が向上する。
  • 窒素施用量は移植とほぼ同等でよい。速効性窒素の分施法としては、10a当たり基肥(3kg)+播種後約40日目追肥(2kg)+穂肥(2kg+2kg)、省力施肥としては、基肥と中間追肥に施用する窒素を被覆尿素100日型で代用する等の方法が収量面で安定している( 表2)。
  • 収量は4か年平均(場内試験)で移植とほぼ同等となる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 水稲の代かき同時土中点播直播を安定して行う上での技術指針となる。
  • 試験は細粒灰色低地土(場内)及び中粗粒灰色低地土(現地)で行われたものである。
  • 品種に適合した施肥法をとれば他品種でも本法がほぼ適用できる。
  • 播種深度は打込み時の代かき土壌の硬さに最も強く影響される。従って、荒代かき時の水量の適正化(代かき時にわらの浮遊がない条件)に努める。
  • 高い出芽率が見込まれる場合は、播種量を2kg程度まで減量できる。
  • スクミリンゴガイの生息圃場では、苗が食害を受けやすいため栽培を避ける。発生が認められた場合は落水期間の延長(播種後約2週間)や農薬防除で対応する。

具体的データ

表1 苗立率、浮苗率、出芽深度、生育量
表1 苗立率、浮苗率、出芽深度、生育量

 

写真1 センターマーカーを装着した8条用播種機の播種作業
写真1 センターマーカーを装着した8条用播種機の播種作業

 

写真2 センターマーカー使用後の稲田・条の直線性と一定の行程間隔
写真2 センターマーカー使用後の稲田・条の直線性と一定の行程間隔

 

表2 播種量及び播種様式と収量
表2 播種量及び播種様式と収量

 

その他

  • 研究課題名:(1)稲・麦の省力二毛作技術の体系化、(2)暖地適応型超省力水稲直播栽培技術体系の技 術・経営的評価
  • 予算区分 :地域総合研究「直播稲作型」、経常研究
  • 研究期間 :平成10年度(平成9~13年、6~8年)