ケトン測定器を用いた血中3-ヒドロキシ酪酸による牛の簡易双胎妊娠診断
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要約
双胎牛の血中3-ヒドロキシ酪酸濃度は分娩前90日において単胎牛より有意に高く、分娩前60日以降急激に増加する。分娩前60日以降において、ケトン測定器により測定した全血中3-ヒドロキシ酪酸濃度が800μmol/l以上の場合、ほぼ双胎妊振と診断できる。
- 担当:九州農業試験場・畜産部・育種繁殖研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:畜産・草地
- 専門:繁殖
- 対象:家畜類
- 分類:普及
背景・ねらい
近年、肉用繁殖農家において、子牛生産率の向上を目指して、胚移植を利用した双子生産が試みられているが、双胎妊娠の場合、単胎妊娠に比べて妊娠後期の代謝障害および分娩時の事故が多発している。よって、事前に双胎妊娠を診断し、適切な管理によって、それらを未然に防止する必要がある。そのため、ケトン測定器を用いた妊娠後期における双胎妊娠の簡易診断法の開発を試みた。
成果の内容・特徴
体内および体外受精由来胚を左右両子宮角に移植して妊娠させた双胎牛(12頭)と人工授精により妊娠させた単胎牛(8頭)を実験に用いた。
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双胎牛の全血中および血漿中3-ヒドロキシ酪酸(3-OHBA)濃度は分娩前90日において単胎牛より有意に高く、分娩前60日以降、急激に増加する(図1,図2)。
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分娩前60日および30日における双胎牛の全血中3-OHBA濃度はそれぞれ、平均895,1663μmol/l、単胎牛は平均453,495μmol/l、血漿中3-OHBA濃度については双胎牛は平均786,1306μmol/l、単胎牛は平均400、442μmol/lと双胎牛と単胎牛の間に大きな差異が認められ、分娩前60日以降において、全血中および血漿中3-OHBA濃度がそれぞれ800μmol/lおよび700μmol/l以上の場合、ほぼ双胎妊娠と診断できる(図1,図2)。
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ケトン測定器によって測定された全血中3-OHBA濃度とオートアナライザーによって測定された血漿中3-OHBA濃度の間には高い相関(r=0.99)が認められる(図3)。
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ケトン測定器(重量310g)は携帯でき、操作も簡易で1サンプルは約2分で測定できる(図4)。
成果の活用面・留意点
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ケトン測定器は全血でも3-OHBAの測定が可能であり、フィールドにおいても簡易に双胎妊娠診断ができる。
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1回の測定に必要な血液量は約100μlである。
具体的データ

図1 妊娠後期における全血中3-OHBAの推移

図2 妊娠後期における血漿中3-OHBAの推移

図3 ケトン測定器による全血中3-OHBAとオートアナライザ一による血漿中3-OHBAの相関

図4 ケトン測定器
その他
- 研究課題名:肥育素牛の安定的双子生産技術の開発
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成10年度(平成6-11年)