踏圧抵抗性に優れたロールベール用のギニアグラス極早生品種「九州7号」
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要約
ギニアグラス「九州7号」は、中型のトラクタによる機械作業に対して踏圧抵抗性を示し2番草以降の収量を得ることができる。茎が細く乾燥速度が早いため、乾草やラップサイレージ調製に適している。極早生であるためイタリアンライグラスとの作付け体系が組みやすい。初期生育が良く、1番草の乾草は品質が優れている。
- 担当:九州農業試験場・草地部・牧草育種研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:畜産・草地
- 専門:育種
- 対象:牧草類
- 分類:普及
背景・ねらい
ギニアグラスのナツカゼは、初期生育性が優れているため夏雑草との競合に勝って多くの乾物収量を得ることができる一年生夏作牧草であるが、草丈が2.5m以上にもなるため収穫作業に中~大型機械が必要となり、刈株が作業機械の車輪による踏圧の被害を受けて再生しなくなることと乾燥速度が遅いことなどが指摘されている。冬作牧草と容易に作付け体系を組むことができる極早生・小型のギニアグラスで、小~中型のトラクタで容易に乾草・ラップサイレージ調製ができ、踏圧抵抗性に優れ、しかもナツカゼ並の優れた初期生育性を備えた品種を育成する。
成果の内容・特徴
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中型トラクタを使用して収穫作業を行うと、ナツカゼの刈株は再生不良となるが、九州7号は2番草の収穫を得ることができる(表1)。
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刈株をトラクタで踏みつけられなければ乾物収量はナツカゼの88%であるが、TDN含量が高いためアール当たりのTDN収量ではナツカゼよりも多くなる(表1、表2)。
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初期生育性はほぼナツカゼ並であり、ガットンより優れている(表2)。
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細茎で乾燥速度が速いため、乾草やラップサイレージに適している(表2、図1、図2)。
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極早生でガットンよりも3日、グリーンパニックより5日、ナツカゼよりも10日ほど出穂が早い。草丈は180cm程度で、ナツカゼよりも70cm低く、細茎である(表2)。
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ナツカゼよりも種子の休眠が浅く、採種して2カ月後には高い発芽率を示す(表2)。
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生殖様式は単為生殖である(表2)。
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1番草の乾草はTDN含量と乾物消化率がナツカゼよりも高く、しかも採食性が優れている。2番草のラップサイレージのTDN含量はナツカゼ並である(表2)。
成果の活用面・留意点
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関西以西の畑地で、中型作業機械を使って乾草・ラップサイレージ調製が容易にでき、特に南九州では5月の連休前後に播種すると3回の刈取りが可能となる。
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大型トラクタによる踏圧に対しては再生が不安定となるので、大型トラクタを使う場合は同一の轍を通って踏圧被害を分散させないようにする。
具体的データ

表1 中型トラクタ(33馬力)に対する踏庄抵抗性 (kg/a,九州農試,1996~'98年平均)

表2 九州7号の特性

図1 1番草茎葉の乾燥速度

図2 2番草茎葉の乾燥速度
その他
- 研究課題名:ギニアグラス育成系統の系統適応性・特性評価試験
- 予算区分 :経常,総合的開発(新用途畑作物)
- 研究期間 :平成10年度(昭和63年~平成10年)