ニューラルネットワークによるネザサ型放牧草地の牧養力予測のシミュレーション

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要約

ネザサ型放牧草地におけるネザサの生育を表現できるように、ニューラルネットワークによりネザサの葉部、稈部生長量を推定した。この推定モデルにより平均気温と日射量が異なる場合のネザサ型草地の牧養力を予測するシミュレーションができる。

  • 担当:九州農業試験場・草地部・草地管理研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:草地(永年草地・放牧)、畜産・草地
  • 専門:生態
  • 対象:野草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ネザサ型草地を安定的に維持しながら利用していくために、どのような管理をしていけばよいのか明らかにしていくことは重要である。その場合、ネザサ型草地の植物生産の季節変化を表すモデルを作成し環境あるいは管理に応じたシミュレーションを試みることは、有効な情報を得る手段の1つと考える。久住地域にあるネザサ型草地を対象に、ニューラルネットワークによりネザサの生育量を推定し、平均気温と日射量が異なる場合のネザサ草地の牧養力を予測するためのシミュレーションを行った。

成果の内容・特徴

  • 1995年から1997年までの3年間のデータを用いて、久住地域の放牧下(平均放牧圧161頭/ha/年)のネザサ型草地におけるネザサの生育を表現できるように、ニューラルネットワークによりネザサの葉部、稈部生長量を推定するモデルを作成した(図1)。
  • この推定モデルを用いた各年のシミュレーションの値はいずれの年も実測値に近い値を示す(図2)。
  • 推定モデルを用いて、地域が異なる場合、すなわち平均気温と日射量が異なる場合のネザサの生長量からネザサ型草地の牧養力をシミュレーションにより推定した(図3)。 「放牧牛は、平均6.06kg/日/頭の乾物を摂取する」として牧養力を確定した。その結果、7月の時点(試験地では平均気温摂氏22度、日射量14MJ/平方メートル/日)で、気温が変わらず日射量が増大すれば、ネザサの生産量は増大し牧養力も高まる。また、日射量が変わらず気温が低下すると、ネザサの生産量が増大し牧養力も高まり、さらに気温の低下が著しいとネザサの生産量は減少し牧養力も低下しすることが示された。

成果の活用面・留意点

  • ネザサ型草地を放牧利用するうえで、大まかな牧養力の予測が可能となる。
  • シミュレーションにおけるネザサ型草地の土壌中窒素等のその他環境要因は、調査草地と同等と仮定する。

具体的データ

図1 葉部および稈部生長量推定のためのネットワーク構造
図1 葉部および稈部生長量推定のためのネットワーク構造

 

図2 1995年のネザサ現存量の実測値(点)とシミュレートションの値(線)
図2 1995年のネザサ現存量の実測値(点)とシミュレートションの値(線)

 

図3 平均気温と日射量を変えた場合の推定牧養力
図3 平均気温と日射量を変えた場合の推定牧養力

 

その他

  • 研究課題名:ネザサ型草地の放牧利用による植生制御と持続的生産
  • 予算区分 :大型別枠(生態秩序)
  • 研究期間 :平成10年度(平成5年~10年)