スクミリンゴガイの稚貝に対するウスバキトンボ幼虫の捕食能力

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要約

水田内に高密度で生息するウスバキトンボの幼虫は、殻高5mm以下のスクミリンゴガイの稚貝を捕食する。終齢幼虫の捕食能力はとりわけ高く、1個体が日当たり平均32頭の孵化貝を捕食できる。

  • 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:総合農業(生産環境)、病害虫
  • 専門:作物虫害
  • 対象:害虫
  • 分類:研究

背景・ねらい

西南日本における直播水稲の最重要害虫であるスクミリンゴガイの稚貝に対する天敵の働きについてはこれまでほとんど調べられてこなかった。スクミリンゴガイが生息する水田から採集した水生捕食者に関する予備実験の結果から、生息密度が最も高く、かつ捕食量が多いことが明らかになったウスバキトンボ幼虫について、スクミリンゴガイ稚貝に対する捕食能力を室内実験によって明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ウスバキトンボ幼虫による孵化貝の捕食数は幼虫の齢期が進むにつれて増加し、終齢幼虫で最高になる(図1)。
  • 終齢幼虫の孵化貝に対する捕食能力は、脱皮翌日に急上昇し、以後高水準を維持する。終齢脱皮後10日間の日当たり平均捕食数は32頭である(図2)。
  • 終齢幼虫は殻高4mm以下の稚貝をおもに捕食し、殻高5mm以上に成長した貝は捕食しない(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 水田内におけるスクミリンゴガイに対するウスバキトンボの密度抑制効果を今後調査する必要がある。

具体的データ

図1 ウスバキトンポ幼虫による孵化貝の日当たり捕食数(平均±標準誤差、水田から採集後1日絶食させた幼虫に3日間日当たり10頭の貝を給餌、反復数10)
図1 ウスバキトンポ幼虫による孵化貝の日当たり捕食数(平均±標準誤差、水田から採集後1日絶食させた幼虫に3日間日当たり10頭の貝を給餌、反復数10)

 

図2 ウスバキトンボ終齢幼虫の日齢別孵化貝捕食数(平均±標準誤差、水田から採集後2日以内に脱皮した幼虫に日当たり80頭の貝を給餌、反復数3)
図2 ウスバキトンボ終齢幼虫の日齢別孵化貝捕食数(平均±標準誤差、水田から採集後2日以内に脱皮した幼虫に日当たり80頭の貝を給餌、反復数3)

 

図3 稚貝のサイズとウスバキトンボ終齢幼虫による捕食率の関係(水田から採集後1日絶食させた幼虫に1日間1頭の貝を給餌、供試数各20)
図3 稚貝のサイズとウスバキトンボ終齢幼虫による捕食率の関係(水田から採集後1日絶食させた幼虫に1日間1頭の貝を給餌、供試数各20)

 

その他

  • 研究課題名:水田における個体群動態の解明
  • 予算区分 :特研(スクミリンゴガイ)
  • 研究期間 :平成10年度(平成9年~12年)