熱帯及び温帯採集セジロウンカ個体群の翅型発現性の差

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要約

セジロウンカの熱帯採集個体群は温帯採集個体群と比較して長翅型発現率が低く、相対翅長が短いという遺伝的特性を有することから、温帯個体群より移動分散能力が低い。

  • 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:総合農業(生産環境)、病害虫
  • 専門:作物虫害
  • 対象:昆虫類
  • 分類:研究

背景・ねらい

移動性イネウンカ類の翅多型性は、選抜によって容易に変化しうる遺伝形質であり、地域個体群ごとの変異は大きいと考えられる。セジロウンカの翅型発現性が熱帯と温帯の個体群の間で遺伝的に異なるか否かについて、これまで翅長などの形態形質を含めて比較した例はない。そこで、フィリピン国内の3地点(ルソン島北部Banaue、ルソン島中部Maligaya及びミンダナオ島南部Davao )、及び日本(Niigata)で採集したセジロウンカ個体群を5段階の密度で飼育し、熱帯と温帯の個体群の翅型発現性と相対翅長の違いを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • フィリピン産のセジロウンカ3個体群は、いずれも日本で採集した個体群と比較して長翅発現性が有意に低い(ANCOVA、P&st;0.05)(図1)。
  • フィリピンのBanaue産とDavao産の雌雄及びMaligaya産の雄の相対翅長(前翅長/頭幅)は、いずれも日本で採集した個体群と比較して有意に短い(Steel-Dwass検定、P&st;0.05)(図2)。
  • これらの結果から、セジロウンカの熱帯個体群は温帯個体群より、移動分散能力が低いことが示唆される。

成果の活用面・留意点

  • 下層ジェット気流の解析による発生予察システムの改善(飛来源を考慮した発生予測)のために活用される。

具体的データ

図1 フィリピン(Davao,Maligaya,Banaue)および日本(Niigata)採集セジロウンカ個体群の密度翅型反応
図1 フィリピン(Davao,Maligaya,Banaue)および日本(Niigata)採集セジロウンカ個体群の密度翅型反応

 

図2 フィリピン(Davao,Maligaya,Banaue)および日(Niigata)採集セジロウンカ個体群の相対翅長(前翅長/頭幅)
図2 フィリピン(Davao,Maligaya,Banaue)および日(Niigata)採集セジロウンカ個体群の相対翅長(前翅長/頭幅)

 

その他

  • 研究課題名:イネウンカ類の水田内における個体群動態の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成9~13年)