液状きゅう肥多量連用畑における揮散を含む窒素収支

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要約

液状きゅう肥の多量連用によっていずれの窒素フロー量も増加するが、窒素施用量に対する割合で見ると作物吸収は低下、溶脱とアンモニア揮散は同等、未回収分は増加する。300t/ha連用畑の亜酸化窒素の揮散は量率とも150t/ha連用畑に比べて極めて高い。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・生産管理研究室
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:総合農業(生産環境)、草地(生産管理)、生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:飼料作物類、牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

家畜ふん尿は、地域間だけでなく、地域内あるいは1経営内でも偏在し、一部の圃場に作物生産に必要な窒素量を大幅に上回るふん尿が連年施用されている。そこで、乳牛の液状きゅう肥を1985年より多量に連用している飼料作物畑の窒素収支を解明し、家畜ふん尿の小面積への集中施用が環境に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 液状きゅう肥300t/ha連用畑では、施用ごとの変動は大きいものの亜酸化窒素の揮散量は年平均100kg/ha以上におよぶ(図1)。全窒素施用量に対する亜酸化窒素の揮散率は、60t/ha(標準施用量)および150t/ha連用畑では0.4%に過ぎないが、300t/ha連用畑では平均4.7%に達する(図3)。
  • 液状きゅう肥施用量の増加に伴いアンモニア揮散量は増加する(図2)。全窒素施用量に対する割合はほぼ一定で約30%となる(図3)。
  • 液状きゅう肥施用量の増加に伴い硝酸態窒素の溶脱量は増加するが、全窒素施用量に対する割合はいずれの連用畑も同等である。60t/ha連用畑、300t/ha連用畑とも深さ440cmまでの土壌に残存する窒素の割合は低い(図3)。
  • 多量に連用した畑ほど作物の窒素吸収量は多いが、吸収率は低くなる(図3)。
  • 多量連用により、上記のいずれによっても回収されない窒素の割合が高くなる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 南九州の火山灰台地における家畜ふん尿処理方法改善のための基礎資料とする。
  • 液状きゅう肥を小面積に集中施用することで、亜酸化窒素の揮散量が増大する。
  • 未回収窒素の多くは、窒素ガス(N2)の揮散であると考えられる。

具体的データ

図1 液状きゅう肥連用畑の亜酸化窒素揮散量
図1 液状きゅう肥連用畑の亜酸化窒素揮散量

 

図2 液状きゅう肥連用畑のアンモニア揮散量
図2 液状きゅう肥連用畑のアンモニア揮散量

 

図3 液状きゅう肥連用畑の窒素収支('92年4月~'97年4月・10回施用)
図3 液状きゅう肥連用畑の窒素収支('92年4月~'97年4月・10回施用)

 

その他

  • 研究課題名:家畜ふん多量施用下の窒素フローの解明とその制御技術の開発
  • 予算区分 :一般別枠(物質循環)
  • 研究期間 :平成10年度(平成4~10年)