産地家畜市場における去勢和子牛価格形成の特徴
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要約
産地家畜市場では去勢和子牛価格形成に対して出荷体重とともに血統が重要な要因となっている。しかも、種雄牛以上に2代祖までの血統が影響力を持っている。さらに、和子牛相場が相対的に低いときに血統の影響力がより強くなっている。
- 担当:九州農業試験場・総合研究部・経営管理研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:農業経営・経営
- 専門:経営
- 対象:家畜類
- 分類:指導
背景・ねらい
牛肉輸入自由化にともなう和子牛価格低迷と、繁殖牛農家の減少の中で、和子牛産地では、和子牛価格水準の維持上昇及び出荷頭数の維持拡大に向けた取り組みが行われている。そこで、わが国最大の和子牛産地である南九州に立地する肝属中央家畜市場の和子牛せり市データ(去勢)を用い、和子牛価格形成要因を統計的に解析することによって、和子牛価格の高位安定化のための条件を明らかにする。
成果の内容・特徴
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平成7年度の月別データに基づき、数量化[I]類によって、種雄牛、出荷体重、母牛登録点数、出荷日齢の各要因の和子牛価格に対する影響力の大きさを分析すると、種雄牛と出荷体重が和子牛価格に対して大きな影響力を持つことがわかる(図1)。
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血統要因として種雄牛の代わりに2代祖までの血統(種雄牛と母牛の父との組合せ)を用いると、2代祖までの血統が偏相関係数、レンジの各指標において出荷体重よりも大きな値を示す場合が多くなっており、和子牛価格に対してより大きな影響力を持つことがわかる(表1)。種雄牛と2代祖までの血統の影響力の違いは回帰分析の共分散分析によって確認できる。また、高価格を実現できる種雄牛と2代祖の具体的組合せはカテゴリー数量の大きさによって示され、カテゴリー数量が大きい組合せほど高価格が期待できる。
- 各月の血統要因におけるカテゴリー数量の最大値は、和子牛平均価格の低いときには相対的に大きく、平均価格の高いときには相対的に小さい(表2)。そこで、和子牛価格に対する血統要因と出荷体重の影響力の大きさを、低相場期(4~9月)と高相場期(10~3月)で比較すると、血統要因は低相場期においてより大きな影響力を持ち(表3)、低相場期に出荷予定の和子牛の交配については2代祖との組合せの良い精液の分配を高相場期に対して優先させる等、産地としてより慎重な対応が必要になる。
成果の活用面・留意点
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産地での繁殖牛農家の和子牛生産における交配計画等に活用できる。
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和子牛相場の高い月と低い月は固定的ではないことに留意する。
具体的データ

図1 和子牛価格形成要因分析結果

表1 和子牛価格形成要因分析結果における「種雄牛」と「2代祖までの血統」の影響力

表2 血統要因のカテゴリー数量の最大値と和子牛月別平均価格(単位:千円)

その他
- 研究課題名:和子牛系統間価格差が和子牛供給に及ぼす影響の解明.和子牛産地における担い手経営の摘出と展開条件の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成10年度(平成7~9年度)、(平成10~12年度)