黒大豆のラジカル消去能

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要約

アントシアニンを含み、種皮色が黒の大豆品種・系統のラジカル消去能は、種皮色が赤褐、緑、黄色の大豆品種・系統よりも強い。大豆煮汁中のアントシアニンはラジカルスカベンジャーとして働く。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・流通利用研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:作物生産、食品、流通加工、畑作
  • 専門:加工利用
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水田転作用作物としての高付加価値作物の導入を図る目的で、九州農業試験場では、種皮色の異なる有色大豆を育成している。この中から、機能性に富む新規食品加工用素材としての大豆を選定するために、有色大豆のラジカル消去能の評価を試みる。

成果の内容・特徴

  • 種皮80%エタノール抽出液のリノール酸自動酸化抑制能は、種皮色黒の大豆が最も強い(図1A)。一方、子葉部80%エタノール抽出液の自動酸化抑制能は、種皮色の違いと関係なくほぼ同程度である(図1B)。
  • 大豆煮汁のDPPH(1,1-ジフェニール-2-ピクリルヒドラジル)ラジカル消去能は、種皮色が黒の大豆から得られたものが最も強い(図1C)。煮豆自体のDPPHラジカル消去能も種皮色が黒のものが強い(図1D)。
  • 種皮色が黒の大豆から得られた大豆煮汁には、アントシアニンが多く含まれている(表1)。
  • 種皮色が黒の大豆煮汁は、活性酸素の一つであるスーパーオキサイドラジカルを消去し、その消去能は、他の種皮色の大豆煮汁よりも強い(図2)。
  • ラット肝臓ホモジネイトにBuOOH(tert-ブチルヒドロペルオキシド)を加えると、ラジカルが発生し、化学発光する。この生体内に近い系においても、種皮色が黒の大豆煮汁は、化学発光を強く抑制する(図3A)。この際、大豆煮汁に含まれるアントシアニンは、ラジカルスカベンジャー(捕捉剤)として働く(図3B)。

成果の活用面・留意点

  • 種皮色が黒の大豆品種・系統は、アントシアニンを含み、ラジカル消去能が強いので、機能性に富む新食品開発用素材として期待できる。

具体的データ

図1 大豆(種皮、子葉部、煮汁)の自動酸化抑制能とラジカル消去能の品種・系統間差異
図1 大豆(種皮、子葉部、煮汁)の自動酸化抑制能とラジカル消去能の品種・系統間差異

 

図2 大豆煮汁によるスーパーオキサイドラジカル(O2-)の消去(ESR測定)
図2 大豆煮汁によるスーパーオキサイドラジカル(O2-)の消去(ESR測定)

 

図3 肝蔵ホモジネイト/tert-ブチルヒドロペルオキシド(BuOOH)系における大豆煮汁による化学発光抑制(A)と「九系186」煮汁中のアントシアニンの分解(B)
図3 肝蔵ホモジネイト/tert-ブチルヒドロペルオキシド(BuOOH)系における大豆煮汁による化学発光抑制(A)と「九系186」煮汁中のアントシアニンの分解(B)

 

表1 種皮色黒の大豆煮汁中のアントシアニン含量
表1 種皮色黒の大豆煮汁中のアントシアニン含量

 

その他

  • 研究課題名:暖地における有色大豆の持つ抗酸化能等の機能性評価
  • 予算区分 :総合的開発研究(新用途畑作物)
  • 研究期間 :平成10年度(平成8~10年)