リポキシゲナーゼ完全欠失大豆豆乳の嗜好性、栄養性、機能性
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
リポキシゲナーゼ完全欠失大豆の豆乳は、ビタミンE力価が高く、ラジカル消去能も強い。また本豆乳に残存している青臭み・苦渋味は、脱皮・脱胚軸処理とサイクロデキストリン添加によりさらに低減できる。
- 担当:九州農業試験場・作物開発部・流通利用研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:食品、作物生産、流通加工、畑作
- 専門:加工利用
- 対象:豆類
- 分類:研究
背景・ねらい
リポキシゲナーゼ完全欠失大豆は新規加工用食品素材として期待されているが、その有用特性評価や加工利用技術が未完成なため、現場定着が遅れている。リポキシゲナーゼ完全欠失大豆の食品素材としての利用促進を図る目的で、冷菓デザート類の原料素材となり得る豆乳を試作し、その嗜好性、栄養性、機能性を評価
する。
成果の内容・特徴
-
リポキシゲナーゼ完全欠失特性を導入した大豆(「いちひめ」、「九州127号」、「九州126号」、「九系239」)の豆乳は、その戻し交雑親(「スズユタカ」、「フクユタカ」、「タマホマレ」、「群馬青大豆」)の豆乳に比べて、ビタミンE力価が高く(図1A)、DPPH(1,1-ジフェニール-2-ピクリルヒドラジル)ラジカル消去能も強い(図1B)。またリポキシゲナーゼ完全欠失大豆豆乳は黄色みが強い傾向にあり(図1C)、SH基含量も高い(図1D)。
-
リポキシゲナーゼ完全欠失大豆(「いちひめ」)の豆乳は、その戻し交雑親(「スズユタカ」)の豆乳に比べて青臭み・苦渋味は少ないが(表1)、苦渋味等がわずかに残存しているため、商品価値を高めるにはその低減が不可欠である。
-
この苦渋味は、浸漬大豆を脱皮・脱胚軸処理し、得られた豆乳にβ-サイクロデキストリンを0.3%以上添加することにより大幅に改善できる(表2)。
成果の活用面・留意点
-
リポキシゲナーゼ完全欠失大豆豆乳は、嗜好性、栄養性、機能性に優れた加工食品を作るための素材として期待できる。
-
リポキシゲナーゼ完全欠失大豆としては、九州農試・大豆育種研究室育成の「いちひめ」(東北南部~関東北部向け)、「九州127号」(四国・九州地域向け)、「九州126号」(近畿・中国地域向け)、「九系239」(青大豆)、九系261(小粒納豆用)等が利用できる。
-
豆乳にβ-サイクロデキストリンを添加してもビタミンE力価、ラジカル消去能は保持されている。
具体的データ

図1 豆乳のビタミンE力価、DPPHラジカル消去能、b★値、SH基含量

表1 豆乳の青臭みと苦渋味

表2 「いちひめ」豆乳の苦渋味に対する脱皮・脱胚軸処理、β-サイクロデキストリン添加の影響
その他
- 研究課題名:暖地の過酸化脂質含量に対する流通・貯蔵条件の解明と制御技術の開発/高付加価値加工食品
創出のための新規形質作物の加工技術の開発
- 予算区分 :一般別枠研究(健康機能)/地域総合(調整堆肥)
- 研究期間 :平成10年度(平成8~10年)/(平成10~14年)